2月になり、卒論・修論・博論と発表の時期になりました。慌ただしい毎日ですが、必ず時間厳守で集合しましょう。
須藤さん:Science #5898, 5904, 5905
#5898-page_80、界面に存在する水とバルクに存在する水を区別したという話。カーボンナノチューブ内に閉じ込めた水を1H-NMRで解析し、22度で疎水場にある水を、8度で親水場にある水を同定することが出来たそうです。チャネルやトランスポーターを溶質が通る時に、必ず水の構造や性質を考えなければなりません。水の様子を区別可能になったことで、膜を介した輸送における水の役割がより詳細に解析できるようになるかもしれませんね。他にも信仰や黒マグロ、アデノシン受容体の構造など盛りだくさんな発表でした。
大野さん:PNAS 105(39)
page_15100、枯草菌のforesporeとmother cellをつないでいるチャネルの話。SpoIIIAHがmother cell側に、SpoIIQがforespore側にあり、それらがinner membrane space で相互作用していることは知られていたが、この二つが実はつながっていて膜間をつなぐチャネルになっているらしい。それをBAP tagのラベルが入るかどうかという方法で調べていた。SpoIIIAHはモーターの基部体にあるFliFにも似ているというので、私もこの論文よく読んでみます。なお、大野さんが忙しいのは分かりますが、聞く人の立場に立ち、もう少し準備をしっかりして発表に臨むようにしてください。
小川くん:PNAS 105(48)(49)
(48)page_18953、細菌のペプチドグリカン層を電子線クライオトモグラフィーの技術で観察したという話。べん毛モーターの固定子がペプチドグリカンに固定されるという仕事をやっている私としては、非常に興味深いです。これによれば、ペプチドグリカンは単層で、整然とではなくもう少しランダムな形で架橋しているようです。Jensen labのメンバーがBLASTに来ていたので、この話を彼女としてこれば良かったかなぁと思いました。他にも、Horwich labのGroEL の機能にはいくつのATPが必要なのかという疑問に答えた仕事も面白かったです。
小池くん:Cell 135(4),136(1)
135(4)page_726、小池くん自身が今回一番力を入れて読んだ論文で、酵母の天然株が凝集するときに関与するタンパク質を同定したという話。FLO1が発現すると液体培養した酵母は凝集して沈殿してしまう。発現株の電顕写真でもきれいに凝集している様子が分かりました。どうも凝集している細胞では生理的条件も変わっているらしい。ストレス応答などが凝集のトリガーになっているらしいし、凝集はFLO1発現細胞同士で行っているらしく、自己/非自己の認識という話にまで発展しているようです。私たちも工学部との共同研究で、環境SEMを用いて酵母の表面の堅さを測定しているので、いちどこの酵母株でも試してみると違いがより分かるかもしれないなと思いました。他にもコンデンシンの構造からリングの形成モデルをたてた話もなかなか面白かったです。
さて今日は4人の発表で時間がかなりかかってしまいました。速報では論文を読み内容を理解することは当然大切なのですが、せっかくしっかり準備していてもプレゼンテーションの準備を怠ると台無しになってしまいます。また、時間が押した場合にどう簡潔に説明するかその場で頭を整理し判断することが問われます。同じペースで発表するのではなく、レジュメに準備した資料のうち肝となる部分だけを選択して話すように努力してください。最近、持ち時間を大幅に超過してもまだ同じペースで話しているために、さらに時間がかかってしまう様子が見られます。時間内におさまるように努力してくださいね。そのためにも、発表の前に一度通して発表の練習をするのも大事な訓練だと思います。私はノートを見ないでもレジュメを見れば発表できるように、プリントに書き込んでおき、絶対に話さなければならないポイントを目立つようにマークしています。学生の皆さんも、「目的は何で、どんな実験でどのような結果が出て、新しく分かったことは何なのか」を簡潔にまとめる訓練をこの速報会で行っていただければと思います。