7月5日 (By FN)
Science(ソフィー)、304(5677), pp1605(N&V) + pp682 から
ヒトの赤ちゃんも飼い犬も、成長する過程で言葉にさらされているが、なぜヒトだ
けがしゃべれるようになるのか? ボーダー・コリーの"Rico"クン(♂、9才)の学習
過程を、心理学分野で知識が蓄積されているヒトの赤ちゃんのデータと比較している
。彼の場合、覚えられる言葉は主にボールや人形などの200種類のアイテムで、トレ
ーニングによって動詞や場所と結びついて覚えるようだ。(ヒトの場合はカテゴリー
に分けて覚えるらしいので、アイテム以外の概念的な言葉も覚えていき、しゃべれる
ようになるのかな?)。
(追記) 紹介されなかった、304(5677), pp1672 の Calcium pump の話
SR Ca2+-ATPase は、−ヌクレオチド、+Ca2+のCa2-E1 stateと、+阻害剤、−Ca2+のCa2+-free E2 stateが
、すでに結晶構造解析によって構造が明らかにされている(Toyoshima, C., et al.)。
本論文で、AMPPCPやADP:AIF4-などの加水分解できないATPア
ナログ存在下での結晶構造を得た。中間体状態(Ca2-E1〜P state)の構造
までがでそろったことにより、ポンピングのメカニズムが見えてきたようだ。
JBC(伊藤)、279(9), pp7613 から
SNARE core complexは、in vtroでは、N末端からC末端側に向けてcoild-coilを形
成していくそうだ。これまでの研究から、細胞内では、complex形成前は、Syntaxin
にはSM proteinsやTomsyn、SNAP25にはSNIPなどが結合しており、またVAMPのSNAREモ
チーフはC末端側の一部が膜に埋もれているが、SNARE machinery の制御タンパク質
は、このようなcore complexの性質を利用してるのだろうか?
(追記) JBCの今年度から始まった企画「Reflections」は、昔話を交えたレビューだそ
うです。
(伊藤:追記の追記)当日紹介できなかったのだが、Issue 10のRefrectionsはMyosin Iの研究者E. D. Kornが書いている。書き出しがユーモラス。「私が編集者のHerb TaborからReflectionsを書いてくれと頼まれたのは2002年9月のことだった。最初に思ったのは、これは何かの間違いではないか、ということだ。なぜなら、Reflections(のような思い出話)はジジイが書くものだからだ。例えば・・例えば・・例えば・・すぐに(Herbの意図に)合点がいった。例えばオレみたいなジジイだ!」
PNAS(寺島)、101(24), pp 8930 から
ADP存在下におけるscallop myosin S1 (near-rigor state)の構造解析。サイクル
上の一つ前の構造、ADP:VO4結合状態(ADP-Pi state)と比較している。余
談ででてきた、「ADP:VO4は、ほんとうにADP-Pi stateを模倣しているの
か? 実のところ怪しい」という金吾さんのコメントが印象的。ミオシンの構造解析
は、種類や結晶化の条件などを変えて、実にたくさんの論文が発表されており、分野
外の人間にとって、イントロを読んだだけでは、どこまでわかっているのか、いまい
ち状況がつかみにくいです。いいレビューがあれば、教えてくださーい。
Cell(楠本)、117(7), pp 927 から
中胚葉で特異的に発現する転写因子 Twist は、E-cadherin の発現を抑えて細胞間
接着をなくし、細胞の運動性を高める働きをするが、実はガン細胞にとっても、転移
する際、病巣から移動するのにも大事だった、という話。わかってしまえば、ありそ
うな話だが、実際に調べないと気づかない、という例かな。
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