2006年 5月22日
小嶋誠司さん Nature:No.7067, 7071, 7089
合成生物学の話。話を聞くまで、[nature]って書いてあるのが本当の写真かと思いました。バクテリアのいろんな性質は、面白いことに利用することもできるんですね。
細菌のシグナル伝達ネットワークの設計原理の話。細胞ごとに異なる遺伝子発現のノイズがあるため、たんぱく質やリン酸化のレベルが違うのに、大腸菌の走化性ネットワークが、十分なロバストネスを備えた最小のネットワーク構造を持っている。数マイクロという小さな大腸菌にも、ヒトと同じように個人差はあっても、現象として見られる応答はみんな同じっていうのがすごいなと思いました。
でも、逆に、大腸菌は分裂で増えていて、みんな同じなのに、タンパクレベルなどが異なっているというところが、一匹一匹、生きている個体なんだと改めて実感しました。
あとは、コヘシンをリン酸化から守るたんぱく質「守護神」。インパクトがあり、素敵な名前だなと思いました。
瀧口陽子さん Science:Vol.311 No.5762, 5766
scaffold protein, Ste5の役割の話。もともと効率よくシグナル伝達するためのたんぱく質として知られていたのに、周囲のほかのタンパク質との相互作用によってネガティブな応答も引き起こすことが明らかにされた。
このような報告を聞くと、これまでに知られているシグナル伝達経路においても、同じようなことが起きているのではないかと疑ってしまいそうです。またその逆も・・・
Nisin生合成における酵素の構造とメカニズムの話。私は、酵素の構造やメカニズムの解析よりも、Nisinが食べ物の防腐剤として、10年間使用されているにもかかわらず、耐性菌が出ていないということに驚きました。菌よりその薬のほうが危ないんじゃないかと思ってしまいました。
福岡さん PNAS:Vol.103 No.2, 16
nucleoporinはマメ科植物のnodule形成においてカルシウムのスパイキングを必要とすることと、リゾビウムと菌根カビの共生にエッセンシャルである。という話。
nucleoporinは核膜にあって、核と細胞質とのコミュニケーションに重要な役割を果たしている。そして、それはリゾビウムのnodule形成と菌根カビのコロニー形成に必要な存在である。共生は、その関係が成立することで、お互いが生きていくために快適であるという面白い現象だと思います。うまくできてるなあって。
これまで、マメ科植物側が栄養源を得るために、リゾビウムとの共生が必要である、ということは知っていましたが、この話を聞いて、逆にバクテリア側も植物の影響を受けているということを初めて知りました。まさに持ちつ持たれつの関係がここにあると思いました。でも、多細胞で、しかもバクテリアという違う生き物が入ってくると、いろんな因子が関与してくるのですごく複雑で難しいですね。
松浦さん Cell:Vol.125 No.1
RNAが細胞内のマグネシウム濃度をセンスしている。という話。バクテリアの生体内マグネシウムは5mMで一定に保たれているが、これは、マグネシウムを取り込む膜たんぱく質をコードするmRNAの構造がマグネシウム濃度の高低によって変わり、調整されているかららしい。mRNAの構造を変えることで制御するというのはもっともらしいとは思いますが・・・
逆に、次の、膜たんぱくがエンドソームに取り込まれる輸送経路の話は、すごくムダに、といえるくらい厳重であると思いました。
松浦さんもおっしゃっていましたが、モデル図を見たところ、ユビキチン化されたたんぱく質がクラスチンなどの複合体からESCRT-I,ESCRT-IIへと輸送されているが、ESCRT-IIIに受け渡されるまで、変化していないのに何の意味があるのかと不思議な感じでした。
こういうふうに、すごく単純な制御とすごく複雑な輸送という、内容は違うけれど、極端な例を見て、これが原核生物と真核生物の違いなのかなあと思いました。
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