2006年 6月12日
本間さん Nature, volume 441, Number 7091, 7092を紹介.
水の味の話(number 7091, p354).水の味とは、口からある化学溶液を除いた後に水によって起こる味覚の後印象のことで、すすぎによる刺激(リガンド)の除去により、ヒトは味覚を感じるらしい.面白い発想だし,このような機構実際にあるのかもしれないが,ヒトが甘みを感じるかどうか,という実験のようなので,結果にヒトの主観が入ったりしないのだろうか???
個人的に興味深かったのは,LEDの話(p325).窒化アルミニウムを利用することで発光波長が210 nmのLEDを開発したらしい。これまで報告されたあらゆるLEDの中で最も短い波長で,励起子発光デバイスの実現およびガス光源から固体光源への交換に向けた重要な第一歩になるそうです。青色LED開発以来,この分野は発展著しいですね.
余談ですがLEDは純粋な点光源であることから,顕微鏡等の光学系には理想の光源で,応用研究も進んでいるとか.LEDのエネルギー効率はハロゲンランプを超えたそうです(By National Instrumentsの社員さん)
田島くん.Science, Volume 312, Issue 5779, 5776を紹介.
ポプラの木の開花の話(Issue 5776,p1040).一年草の開花時期は一対の遺伝子、FTとCO、によって制御されるが、ポプラの木も同様にFT 相同分子が木の開花時期の決定的要因であるだけでなく,短日のタイミングで生じる成長休止と、休眠芽?形成にも関与していることが分かったらしい.緯度によってFT/CO mRNAの発現パターンが異なるのも興味深いですね.
個人的には,表紙になっている『膜に埋まったカーボンナノチューブがガスや水を通す』という話をもう少し詳しく聞きたかった.バクテリアに刺そう,という研究もあることだし・・・.
小原さん.PNAS, Volume 103, Number 13を紹介.
クウォンタムドットを使った細菌同定の話(p4841).クウォンタムドットで標識したファージを宿主細菌に処理することで,病原性を持つ細菌を高感度かつ迅速に検出することが目的.詳細は分からないけれど,実験サンプルでは10細胞/mlまで検出できるらしい.私の解釈が間違ってるかもしれないけれど,特定の細菌を宿主とするファージしか利用できない???例えばEHECとEPECは区別できるのだろうか???
伊藤さん.EMBO J., Volume 25, Number 8, 10を紹介.
制限酵素Ecl18kIとDNAの複合体の構造を1.7 Åで解いた論文(number 10, p2219).既知のNgoMIV-DNA複合体との比較から,両者の認識部位は塩基配列上では異なるにもかかわらず,同様のDNA認識モジュールを利用しているらしい.両制限酵素は進化的に関わりがあるらしいけれど,Ecl18kIはNgoMIV と同じ認識部位を利用するために,DNA認識配列の真ん中の塩基をフリップアウトさせて,DNAの切断を可能にしているのは面白いですね.普段何気なく使っている制限酵素にも,まだまだ不思議が詰まっているのだなあと改めて感じました.
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