吉住さん:Nature 2009 vol. 458 no. 7237, no. 7238.
構造を2つほど、1) スプライソソームのお話。ヒト・スプライソソームU1-snRNP複合体を5.5Å分解能で解きました(結晶)ということです。今まで全くわからなかった全体構造が見えてきて、U1-70Kの一部が、長く伸び、catalytic domainをカバーしているというのは何か意味深です。スプライシングという真核生物の一大イベントに構造から切り込んだ素晴らしい仕事だと思います。今回は5.5Å分解能なので、さらなる高分解能構造が待たれるところです。2)細胞間接着のお話。ギャップジャンクションを構成するヒト・コネキシン26の結晶構造ということで、開状態での3.5Å構造ということです。6つのプロトマーの4本の膜貫通へリックスの配置がわかり、物質の透過経路が明らかになりました。奇しくも2つとも「ヒト」でした。そういう時代なのでしょうか。
小嶋さん:EMBO 2009 vol. 27 no.21, 22, Vol. 28,no.1, 2, 4, 5.
1)多剤耐性に関わるLmrRのお話。Lactococcus lactisの細胞膜にある、Transporter LmrCDの転写抑制因子・LmrRの構造を、薬物有り無しで解きましたということです。LmrRはLmrCDのプロモーターに結合して転写を抑制していますが、薬物が結合→プロモーターからLmrRが解離→transporterが大量発現→多剤耐性、という事だったと思うのですが、この内の初段階反応を構造学的に綺麗に説明していました。籠の様なdimer構造を持ち、その内部の疎水ポケットに基質が入り込みます。面白いことに異なる基質では、その包み込み方が異なることが明確に示されています。欲を言えばプロモーター領域(DNA)との共結晶も見たいところです。2)Protein Secretionのお話。タイプVIの輸送マシーナリーで、ClpVと呼ばれる内膜側にリングの様な構造を持つ蛋白質に結合するものを2種類見つけ、それらはチューブ様構造を持つこと、ClpVにより溶けること、ATP依存的であることなどを生化学的、また電顕により構造学的に検討していました。それにしても載る雑誌数が1号に6報というのは激減ですね。そういう時代なのでしょうか。