湯浅さんのPNASな話。電池の話が一番わかりやすかったが、Biologyではないの で、フッ素化GFPの話の感想を述べてみる。私も速報で何度か遭遇したゆるい tRNAを使ってフッ素ロイシンをむりくり組み込ませて作らせたGFPの性能を検証 したという話だった(と思う)。細かいことはよくわからなかったが、GFPの蛍 光能でスクリーニングしてきた変異型フッ素化GFPがWT並にrefoldできたよ、と いうのがメインのポイントだ(と思う)。だけど、こういう変異GFPを作ること にどういう意味があるのか疑問が残る。ロイシンをデカイ(フッ素)ロイシンに 置換するだけで、refolding kineticsの研究になんか役に立つのだろうか。物理 的なことには疎いのだが、たかがロイシンだけだ。でかくするだけなら他の残基 に変えるだけでいい気もする。論文ではどういう動機付けをしていたのか気になる。
小原さんのCellな話。通常マクロファージは菌を捕食するとshingosine kinase
やphospholipase Cを使って細胞内のカルシウム濃度を上昇させることで
phagosomeとlysosomeのfusionを促進させて菌を殺すシステムを持つ。今回の論
文では結核菌がこのlysosomal fusionをかわすのに重要な新しいファクターとし
てCoronin Iなるものを見つけたというのがメインテーマだ。それまでのモデル
では結核菌は何らかの方法で上述の二つのファクターをブロックしているという
ものだったが、Coronin Iが本当ならば能動的に食胞外カルシウム濃度を上げ、
Calcineurinを活性化させてlysosomal fusionを妨げるというのだ。どういうこ
とだろうか???カルシウム濃度について言えば全く逆ではないか!このモデル
(?)が正しいとしたら、カルシウム濃度を食胞作用の阻害の指標に用いるのは
アブナイのではないか。今後このジレンマをどう解決する興味深い。一般的な話
になるが、scienceって様々なデータをとってそこから体系化したりモデル化し
たりすることで、「そうだったのか」という納得を得る作業を言うのだと思う
が、たまに今回のような定説を揺るがす論文が出てくる。この論文では問題は解
決されていないが、新しいデータをぶち挙げることで関係者にパニックを与える
インパクトはあったと思う。もし、こういう論文を自分が書けたとしたらエクス
タシーを感じるはずだ。「べん毛は実は回っていない」とか。私はエクスタシー
と納得なら前者がいい。どうせ真実なんて科学からは得られないのだから。
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