2012年2月20日

寺内さん(Nature #7384, 7385)
2. ヒトの小胞開口型Caチャネル(CRAC channel)のイオン選択性や活性化因子の影響を見た話。やっていることは単純で、イオンチャネル内に存在するV102残基をいろいろなアミノ酸に置換した時のそのチャンル機能を見たということで、V102がチャネルのゲートや活性化因子(STIM1)の結合に重要であるといことが分かった。
3. ヒトが持つバクテリアの感染に対する防御のメカニズムの話。Hostのgalectin 8のノックダウンによりサルモネラの感染が上昇すること、galectin 8がNDP52(オートファジーのレセプター)と結合・共局在することなどを示し、それらの相互作用がバクテリアを内包した小胞をオートファゴソームが包むという反応を生じさせるというモデルを立てていた。
4. クラミドモナス由来のチャネルロドプシンの結晶構造を解いた話。基本的な形はBRやHRなどと似ているようで、更に様々な残基をアラニンに置換した時のチャネル機能も解析していた。

朱さん(Science Vol.334, 335)
Vol.334, p.1675
DNA複製時に必要なclamp loaderとDNA clampの共結晶の話。ATP binding formとADP binding formの両方の結晶構造を解いて、clampがATP依存的に開裂する機構のモデルを立てていた。
Vol.335, p.328
DNA複製の際のOkazaki fragment合成の際のDNAポリメラーゼの交換の機構についての話。polymerase IIIのサブユニットであるDnaQに黄色の蛍光タンパク質を結合させ、その蛍光を見たところ3段階の蛍光パターンが見られたとのことらしいが、実験手法も、最終的なモデル図も、この分野の背景をよく知らない私にはよく理解できなかった。
Vol.335, p.432, 436
ヒトの心臓や神経に発現しているKチャネル(K2P)の結晶構造を解いたという話×2。channel poreの細胞外側に大きなcapが存在しており、これがdragの作用やtoxinの結合阻害に重要だ、という話だったような気がします。

郷原さん(PNAS Vol.108 No.51, Vol.109 No.5)
p.20597
ERにおけるUPR(unfolded protein response)の性質の話。temperature sensitiveにUPRの働きをノックアウトする系を用いることで、UPRがER内において、タンパクのアンフォールドだけでなく様々なER内のストレスを解消するために働いているということを示していた。
p.20784
BK channelというCaチャネルの活性の話。線虫においてBK channelはslo-1によってコードされているらしいのだが、このslo-1は12個のスプライシングバリアントを持っているらしく、それぞれのバリアントから出来るタンパク質のイオン透過活性がそれぞれ異なる、ということを示していた。選択的スプライシングによってタンパクの活性を変化させるという話は、最近よく聞くような気がした。
p.20802
根粒菌が持つK channelの話。Mesorhizobiumが持つMlotiK1 channlはcAMP等により活性化されることが知られているらしいのだが、その際の構造変化をAFMにより見て、そこへ結晶構造を当てはめた。同じようなことがべん毛固定子でも出来たらおもしろいと思った。
p.1461
FRETを生きている細胞中で見たという話。蛍光標識した2タンパク質をHeLa細胞中へとマイクロインジェクションして、その相互作用をFRETで見たとのこと。buffer中や細胞抽出物中で見られる現象が、生きている細胞中でも見られたという当たり前の話のような気がした。
p.1494
構造解析手法の話。構造解析プログラムROSETTAを改良して、タンパク質の疎水性コアのパッキングが安定化するような変異体を模索するためのソフトを開発し、さらに実際にその変異を導入したタンパク質の構造的安定性が上昇した、ということを示した。この手法を利用することで、たぶん結晶が取れやすいタンパク質をつくることが可能なのだと思われるが、果たしてその変異によって活性は大丈夫なのかとか疑問が残る。

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