尾上さん (Science 6179, 6198)
Meckenstock et al.
油田に生息する細菌の話。油田から湧き出る原油の中には1-3ulほどの水のdropletが多量に含まれており、その中に微生物が生息していることは既に知られていた。今回そのdroplet1個1個に対してメタゲノム解析を行ない、様々なbacteria,archaeaが、それぞれのdropletごとに異なる割合で存在していることを明らかにした。dropletごとのバリエーションを決める要因は何なのか気になった。
Gagnon et al.
リボソームの構造の話。elongation factor 4 (EF-4)との共結晶を解いた。リボソーム単体の結晶構造を参考に、立体障害を引き起こさないようにデザインしたL9 fusionタンパク質を使用したのが味噌らしい。30Sと50Sの相対位置がCW方向(=予想外の方向?)に5度回転した構造が見られたらしいが、その生理的な意味などよく分からないことが多い。
Geary et al.
RNAでDNAorigamiみたいなことをしたという話。in vivoでは、短鎖合成されやすいRNAでorigamiを用いる方が応用性が高いらしく、今回はタイル状の構造を作ることに成功した。DNAorigamiと比べ、まだまだ作れる形の種類は少なそうだが、今後思いもよらない使い方がされ始めるようになるのかもしれない。
Kim et al.
寄生植物の話。寄生植物(ネナシカズラ)と被寄生植物(ナズナ、トマト)との間のmRNAの移動を調べ、予想以上に被寄生植物の遺伝子が寄生植物の方に移動していたのが驚きだったらしい。植物間の遺伝子伝播を引き起こす要因の一つということなのでしょう。
郷原さん(Vol.111, No.38 39)
McDowall et al.
大腸菌においてformateからのH2産生を触媒する酵素formate hydrogenlyase(FHL)を精製し、活性を測定したという話。周囲のH2量が高くてもH2を産生できるのがいいね!ということらしい。たぶん工業的な応用が云々という話に繋がるのだと思う。
Thayer et al.
寿命に関連する因子の話? 細胞が不等分裂する際、母細胞に残り続けるタンパク質を見つけるために、酵母をパルスチェイス培養していくつかのタンパク質を同定し、Cre-loxPのシステムを使って時間特異的に蛍光タンパク質をfusionして分裂後のタンパク質の振る舞いを追いかけて確認していた。継代と電気泳動パターンの関係性も見ていたがよく分からなかった。
Weber et al.
コレラの毒素産生の制御の話。コレラの毒性因子は低温では作られないが、人体温になると産生される。今回、毒性因子発現に関わるToxTのmRNAのSD配列(AGAG)の上流にあるUUUUに着目し、このUUUUがおそらく温度依存的にSDと結合する能力があり、翻訳を制御しているということをUUUUに変異を導入することで示していた。シンプルでとても分かりやすい結果だった。