Zabow et al(#7545); 私も新学術領域の会議では生体プローブ開発の話を良く伺うのですが、これは細胞の深い位置における環境の変化を捉えることを目的として作成されたプローブの話です。金属でできた2枚の丸いプレートの間にハイドロゲルを挟み、これが周囲の環境の変化に応じて膨張や収縮を起こすことで、変化の検出を行うらしい。アウトプットが磁場のシグナルなので、NMR装置を用いた検出を行うようです。
Schnupf et al(#7545); セグメントをもつ腸内細菌が培養可能になったという話。嫌気性のグラム陽性の細菌(名前は失念しました)で、マウスで見つかったものらしいですが、ヒトにもいると思われます。この細菌は、ホストの個体において、免疫反応を強く誘導する性質を持ち、ホスト側にとって大変有益な細菌です。しかし、これまでホストとの相互作用に付いては培養することができないため分かっていませんでした。今回、便から細菌を精製し、培養細胞をのせたwellの上で共培養することに成功しました。どうやら、多少は空気があった方が良く生えるようです。非常に長い菌で、セグメント化されていて片方の先から子孫の細胞が離れて行くようです。ホストへの接着力が高いと、免疫誘導力も高いことが分かりました。接着面には、ホストのアクチンが集まってきて、取り込むのに関与しているようです。
尾上さん Science #6225, 6226, 6228 (2015)
Perspectiveを合わせて計6報の紹介でした。そのうち3つが興味を引きました。
Mateja et al(#6226, p1152); 2年ほど前にGetシステムの話をコロキウムで紹介しました。同じグループが結晶構造の仕事を進めて、今回Get3と基質のTM部分を含んだ複合体の結晶構造を報告しています。ちなみに、稲葉さんのこの春のコロキウムでは、別のグループがNatureに報告した研究を発表されていました。今回の論文では、Getシステムで膜に運ばれる新生鎖のTM部分が、Get3のATP form dimerで形成された溝の部分に埋まっていると考えられていましたが、まさにそれを照明する結晶構造が出ていました。さらに、Get3のhelix8ははっきり見えていないようですが、それがフタのような形で働くことも報告されています。
Taylor et al (#6225, p1014); この論文では、緑膿菌を使ってべん毛システムと窒素固定システムが実はトレードオフのようにして獲得されたのではないかという進化的な議論をしていました。べん毛のマスターレギュレーターである、FleQを欠失した株は、べん毛形成ができないために泳ぐことができませんが、この株から泳ぐ変異体を単離したところ、そのすべてがNtrB-NtrCの二成分制御系に変異が同定されたようです。NtrCのDNA binding domainに変異が入ることで、本来FleQが結合すべきところにNtrCが結合でき、それで運動能が回復するようです。しかし、これでScience?というちょっと思いはありました。
Halstead et al (#6228, p1367); ここでもバイオセンサーの開発を報告しています。RNAの標識が今度の目標です。今回は、RNAの一部にウイルスの配列を導入し、GFPまたはRFPで標識したキャプシド蛋白質を用いて、RNAがキャプシドに取り込まれることを利用して色づけをしています。ここでの売りは、1回目のmRNAのturnoverを可視化できるようにしたことです。それを用いて、DrosophilaのOscarと呼ばれる蛋白質がいつ発現するのか、その様子を捉えていました。