北山さん Science #6256, 6257
1) #6257_Toh et al; 寄生植物の植物ホルモンレセプターを同定した話です。ストリゴラクトンは植物が根から出すホルモンで、発芽などに重要だそうですが、アフリカでは寄生植物Strigaが、このホルモンに対する高い受容度をもつために、宿主植物を乗っ取り自分が発芽して成長するために利用してしまうようで、耕作に大きな影響を与えてしまっているそうです。ストリゴラクトンのレセプターはシロイヌナズナで同定されており、そのホモログを探して、ShHTLと名付けた11種のタンパク質を調べたところ、確かに高いホルモン親和性が見られ、結晶構造を解くと結合ポケットが大きく開いていたということでした。まとまった仕事で、名古屋大学のITbMのグループも関与している研究でした。Strigaは紫色の綺麗な花を咲かせますが、有害植物として駆除が求められています。

2) #6256_Wu et al; ヒト腸内細菌が、腸内で生き残るために必要な遺伝子は何か?という問いに答えた研究です。腸内細菌のトランスポゾンライブラリと、同じ菌種で未処理のものを混ぜてマウスの腸に戻し、高脂肪/低脂肪食事を与えた場合にトランスポゾン処理したもので生き残った菌の数をシークエンシングで見積もるという仕事でした。Arabinoxylanを代謝/合成に関与する酵素に変異が入ると、ある腸内細菌は増えなくなるようです。一昔前では考えられないような、シークエンシングテクノロジーの進歩により、こういった仕事がどんどん行われるようになってきた気がします。

3) #6257_Rostislavlelva et al; endocytosysに関与する脂質キナーゼ複合体Vps30-38-34-15の複合体の結晶構造の話です。重水素-水素交換Mass Spectroscopyという最近流行り出した手法で、膜との相互作用部位も同定していました。大きなV型の全体構造で、口の部分に脂質を挟み込むのではないか、と考えているようです。それにしても、よくぞこのような複雑な構造が結晶化できたもんだ、と感心しました。

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