今日で今年度の速報会も終了です。1年間お疲れ様でした。

平田さん Nature #7585, 7586, 7587
1) #7586_Boel et al; コドンの違いによるタンパク質発現量がmRNAのレベルと連関する、という話。細菌からヒトまで6000種もの様々な生物におけるタンパク質の大腸菌内での発現とコドン、mRNA量を調べて、可溶性タンパク質の場合酸性残基の方が発現タンパク質の中に多く含まれることや、コドン3番目はAかUが発現量に効くなど、タンパク質の生成に何が重要な要素なのかを明らかにしていました。コドンを最適化させると、発現量はかなり上がっていて驚きの図もありました。たくさん調べるからこそ分かることなのでしょうが、大変な仕事だという印象でした。

2) #7586_Ketel et al; エンドソームから脂質がリサイクルするとき、分解に進む場合はよく知られているが細胞膜に融合しリサイクルされる系はあまりわかっていなかった。今回は初期エンドソームのPI(3)Pが一旦MTM1により脱リン酸化され、別個の酵素によりリン酸化を受けてPI(4)Pになることが重要であることが示されました。先日のBMB2015で脂質のリン酸化によるシグナル伝達の話を改めて聞いたおかげで、頭にすんなり入ってきました。

3) #7587_Westermann et al; サルモネラがヒト細胞に感染する際、どのようなsRNAが働くのかを見出した仕事。Dual RNAseqで片っ端からRNAをsequenceするのですが、rRNAの関与を取り除くことでかなり精度が高くなり、PinTという80塩基のsRNAが感染の後期で関与することを見出していました。私が学生の頃では全くデザインできないような、技術の進歩があってこその研究で、取り残されないように勉強しないと、と思いました。

山口さん Science #6271, 6273
1) #6271_Burkett et al; オキシトシンという物質がプレーリーハタネズミにおいても「共感」を引き起こす原因となっていることを見出した。2匹のネズミの片方に恐怖を与えると、もう片方のネズミが毛繕いを行い慰める。そのときにオキシトシンがACCという脳の部位で作用することが分かった。「共感」がネズミにも保存されているとは知らなかった。

2) #6273_Lito et al; K-Rasの変異体G12Cに効果がある阻害剤ARS853の作用機序を明らかにした論文。GDP結合型は不活性だが、このformにfixすることで癌細胞を死滅させることができるようだ。最近G proteinの作動原理を勉強していたので、関心が持てた。

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