小嶋さん
Nature #7738, 7749:相変わらず多くの複合体構造がクライオEMで解かれていた。クライオEMのパワーはすごいですね。やはりべん毛も、固定子・輸送装置共に構造ベースの情報がないと難しい段階になってきたと思いました。
Yang et al: γセクレターゼによるNotchシグナルの切断メカニズムを構造解析から明らかにした。γセクレターゼは膜内プロテアーゼの1種で、疎水性環境中でポリペプチド鎖を切断する。Yangらは、γセクレターゼを構成するPS1/APH-1/PEN-2/NCT複合体を精製し、Notchと複合体を形成させ、クライオEMで構造解析した。その結果、C末端の不安定領域がセクレターゼ内に結合すると、βストランドを形成し酵素と安定に結合する。このメカニズムは本間研出身で現在京大にいる檜作くんが研究している、大腸菌RsePで提唱されているβストランド間での相互作用が基質認識に重要であるというモデルと一致していた。
Li et al & Tristan et al: LPSを輸送するLpt複合体の構造解析。ABCトランスポーターであるLptBGFと調節タンパク質LptCの複合体を精製し、クライオEMで構造解析した。そうするとLPSを含む複合体構造が観察され、さらに、ATPを噛んでいるとLPSが押し出されて構造中から消えた。生化学的な実験から、ATP加水分解によってLptCを介して、内膜から外膜へとLPSが輸送されるメカニズムが提唱された。
錦野くん
Science #6428, 6421:生物物理的なジャイアントリポソームの仕事は、自分の仕事にも繋げられそうだった。べん毛研究はそろそろ構成的アプローチによって研究していかなければいけない段階ではないかと思いました。
Zhou et al: γセクレターゼによるAPPの切断様式。先のNatureの論文と同じグループの仕事。ちなみにファーストとセカンドがNatureとは逆。γセクレターゼの複合体構造で、APPが結合した状態での構造が解けた。Notchと結合様式は変わらず、γセクレターゼをターゲットにした創薬は無理そう。
Wilson et al: 腸内大腸菌が作るポリケトン体が宿主に対して毒性を発揮することを明らかにした。ジェノトキシンと呼ばれる。ポリケトンを介してシクロプロパンが形成されると、DNAのアデニンと結合し、がん化を引き起こすらしい。
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