Science 平野くん #6432 #6443 #6447
Manon et al.,
単為生殖性と思われていた線虫株の胚発生の際に、雄性遺伝子が必要だと判明した話。雌性遺伝子のみの胚は発生が進まず、雄性遺伝子が含まれる場合のみ発生が進むということだったが、その後9割の個体で雄性遺伝子は失われてメスになるというのが興味深かった。雄性遺伝子の発現が発生に必要というわけでもなく、雄性遺伝子を持つ精子との受精、という過程が重要というのが面白い。

Brian et al.,
マラリアの抗生物質耐性獲得に対抗する、真菌による手法の紹介。真菌にチャネル阻害物質を組み替えて導入し、蚊に感染させることでマラリアのホストを減少させるとのこと。人に悪影響がなく既に実用段階で、蚊以外にも効果があるそうなのでこれからの応用にも期待できる。

Mark wt al.,
肥満を引き起こす脳領域の神経異常を、シングルセル発現解析で調べた話。肥満(食欲過剰)の個体のLHA領域ではグルタミン酸トランスポーターの発現が増えるが、個々の活性は減少していた。一度肥満になった個体の発現は増えたままで減らないそうで、一度バランスを崩して遺伝子発現が変化してしまうと二度と正常に戻ることはできないという点が恐ろしい。

PNAS 藤原くん Latest article
Tristan et al.,
牡蠣に感染する二種類のビブリオで、それぞれ感染に関わる因子が異なっていた、という話。細胞間接触の阻害をメインにするもの、T6SSで食細胞に攻撃するものなどがあるそうで、特にT6SSを用いるビブリオ(V. tasmaniensis)は一度ホストの食細胞に貪食されて脱出することで、強い感染力を持つようになるというのが面白かった。

Biswajit et al.,
抗生物質を設計し、黄色ブドウ球菌への効果を確かめた話。設計したペプチド分子に含まれるリジンの数が重要で、多いと宿主細胞(ヒトなど)への障害性が高まる上にバクテリアへの効果が落ちる。細菌細胞膜の負電荷をターゲットにしている模様。リジンが0個でも問題があるそうで、薬剤設計の大変さが伝わってきた。

David et al.,
ヒグマと近縁種のホッキョクグマがどうして寒冷地に適応できるようになったかを、遺伝子発現から調べた話。結果的にはゲノム内に新規の遺伝子を獲得したわけではなく、既存の遺伝子のコピー数を変化させていた。例えばホッキョクグマは肉食で炭水化物を普段摂取しないため脂質代謝遺伝子のレベルが増え、糖代謝のレベルが下がっている。本間先生の質問にもあったように、寒冷地と温暖地で人間の遺伝子のコピー数も異なるのだろうか。

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