オリンピック放送


 みなさんこんにちは。こちらUtahも随分涼しくなってきました。僕は先週meetingのtalkが当たっていたので、このところ非常に忙しい毎日でしたが、それも無事に終わり今週末だけはゆっくりさせてもらいました。秋の紅葉を去年帰国のために見られなかったので、今年は忙しい合間を縫って先週日曜日にTim, Sarahと僕の3人で、Sundanceまで、紅葉を見に行きました。日本のような「もみじ」の赤い葉はあまり見られなかったですが、山を覆う木の葉が山吹色に紅葉して、金色の絨毯を敷き詰められたような感じでした。そのうち写真をupしたいと思いますので、しばらくお待ちを。

 さて、今回は日本中も盛り上がったシドニーオリンピックの話を少ししたいと思います。アメリカでは、日本と違い、オリンピックのTV放送はネットワークのNBCが独占放送することになっていました。NBCはケーブル局を2つ持っているので、実際は3局で放送をしていました。実は僕、8月にケーブルの契約をしたので、今では家で多くのケーブル放送を楽しむことが出来ます。おかげで今回もオリンピック放送を楽しむことが出来ましたが、さすがにここはアメリカ、日本選手の出場する種目はほとんど放送がありません。かろうじて見られたのは、競泳、ソフトボール、ビーチバレー、シンクロナイズドスイミング、野球、マラソン、体操くらいでした。柔道はやっていなかったように思います。悪いことに、期間中NBCは朝から晩までほとんどオリンピック放送を流していましたが、その放送予定時間が非常に大まかなため、予約録画がほとんど出来ません。例えば、12時から5時までの間に放送される予定の競技が、これとこれとこれ・・・ってなかんじで新聞に載っているだけなんです。しかも、録画放送のおかげで、競技の結果が悪ければ放送されなかったりします。僕はバレーボールをやっていたこともあり、バレーを中心にテレビ観戦したかったのですが、アメリカは男子が不調で予選落ちしてしまったため、男子の放送時間は変な時間帯になり、ときどき放送されませんでした(トホホ)。反対に女子は思わぬ好成績だったので、深夜の時間帯で本放送(Utahではchannel 5)で放送されていました。更に困るのが、一つの競技を連続して見せてくれるのでなく、ぶつ切れで複数の競技を見せるのでどうもおちつかないことです。バスケットの男子の試合をしていて、タイムアウトになったら、そこで画面が切り替わり水球の試合を放送し、しばらくしてCMが入ってまたバスケに戻る、と言う感じなのです。録画テープのため結構編集されているので、生放送のドキドキ感が全くないのも残念でした。まあ時差があるので仕方ないですが。また、日本と違い、オリンピックの放送にタレントさんが出てくることは全くなく、落ち着いた感じの放送が多かったです。面白かったのは、日本でも同じようなことがあったそうですが、サッカーの実況中継のアナウンサー(メキシコ出身のスパニッシュを第一外国語とする方です)が、ゴールが決まった瞬間、「ゴーーーーーーーーーール!」と大絶叫を毎回するんです。それに反響があったのか、どの中継で一番長く絶叫していたか、サッカーの全試合が終了した後に番組内で調査していて、最も長かったのが、カメルーンvsブラジル(男子)戦の20秒強でした。日本選手の活躍は結局Webで調べるのが一番早かったのですが、それはアメリカ人にとっても同じようで、録画放送するNBCの番組の視聴率が思ったほど伸びなくて、そのためにCMの時間が増えてしまいました。仕方がないとはいえ、それもオリンピック放送の良くない点であったように思います。今から思えばNHKの放送は充実していたかなぁと思いますね。そうそう、オリンピック総集編というのもなかったです。

 さて、家に帰ってきてNBCをつけると、毎日のように表彰式を放送してくれます。アメリカは金メダルの獲得数がものすごいので、ほとんど毎日複数の金メダリストが現れるんです。その度にあのアメリカ国歌が流れるので、僕もすっかり国歌を覚えてしまいました。金メダリストがあまりにも多いので、銀や銅の選手はスタジオには全然呼ばれません。なかなか厳しい世界であるとも言えますね。当然のようにメダルを獲得していった、マリオン・ジョーンズ、モールス・グリーン、マイケル・ジョンソンたちは、何度も放送されていました。活躍した日本選手でこちらでも注目されたのは、柔道の田村亮子選手、女子マラソンの高橋尚子選手ですね。彼女らは、新聞にも結構ちゃんと取り上げられていました。あと、女子のソフトボールチーム。あの、決勝戦で日本選手が後少しと言うところでフライを取れなかったシーンが、こちらでも大きな写真で載せられていました。日米対決と言えば、サッカーもそうですね。日本男子サッカーチームがアメリカに準々決勝で敗れたとき、アメリカでは「ミラクルだ!」と書かれていましたが、ご存じのようにまだまだアメリカでは男子のサッカーはそうメジャーではないため、「思ったよりも頑張った」というような取り扱いでした。それより、昨年のワールドカップで優勝した女子サッカーチームの方が人気が高く、ノルウェーに負けたときの報道はものすごく大きなもので、女性のメジャースポーツとしてサッカーが完全に根付いたなと実感しました。

 さて、僕が個人的に感動したのは次の2つの試合です。ひとつは、もちろんバレーボール(男子)決勝なのですが、もう一つは女子の飛び込みです。先に飛び込みの話を少ししましょう。この10 meter platformで優勝したのは、下馬評の高かった中国の選手でなく、大逆転でアメリカのLaura Wilkinson選手だったのですが、この試合は非常に見応えがありました。まあ、最初は「このアメリカの選手めっちゃかわいいやん」という不届きな考えで見ていたのですが、中継の最中に、彼女がアメリカの代表選考会の前に飛び込み台に足をぶつけて大けがをし、普段は特別に作られた靴を履かないと今でも歩行が困難である、という話が出て、感動屋の僕はまずそこでウルッとなってしまいました。しかし、最も心を引かれたのは、彼女の飛び込み前の表情です。他のカナダや中国のライバルたちが、緊張で引きつった顔をして台に立っているのに対し、Wilkinson選手は微笑んでいるんです。それがまた何とも言えない穏やかな感じなのです。僕は全く信じられませんでした。どうしてこの最終場面で、あんな穏やかな顔をしていられるんだろう、と不思議でなりませんでした。いい感じで力の抜けた彼女は、その回のダイブで優勝を確実にしました。僕には、勝利の女神が彼女に降りてきて、あんな顔にさせているのか、と思えてなりませんでした。僕の取っているSalt Lake TribuneのSports欄の裏表紙は、やはり彼女の最高の演技を載せていました。
 さて、一方のバレーボールですが、男子は内戦の続くユーゴスラビアが優勝しました。それも、2メートル級の選手で固めたロシアをストレートで下してです。この試合は2セット目の中盤から最後まで放送されました。僕にはユーゴから来ているMomoという大切な友達がいるのですが、彼らの喜びようは本当にすごかったです。つい先日ミロシェビッチ大統領が失脚したような大混乱の国の中で、よくぞ世界1の練習を積んできたものだと思います。この試合をご覧になった方なら分かると思いますが、気迫がとにかくすごい。アタッカーとしてチームを引っ張るグルビッチ兄の気合いあふれるプレーには、男としてマジで惚れます。ほえまくる兄に対し、冷静にトスを上げるグルビッチ弟も、昔僕がセッターをやっていたから、その美しいトスには感激しました。なんというか、トスがただの死んだ打ちやすいボールでなく、打ちやすいが生きていて速い、ゴムまりのような弾力性のある、そんな感じなのです。そんなトスを打ちきる選手のシャープさにはただ脱帽。ボールを打つびしっという音がテレビを通しても十分に聞こえて来るんです。僕は途中から見ていたのですが、ああ、これはロシアは完全に押されてだめだな、勢いの差でユーゴが行きそうだ、と思いました。その通り、ストレートでユーゴが勝ちました。平均身長はロシアよりかなり劣るユーゴが、気迫とプレーの正確さ、パワーで、ロシアを圧倒した、そんな試合でした。身長では絶対に欧米を抜けない日本でも、まだしっかり体を鍛えることで、なんとか世界に食いついていけるのではないか、そんな気がした試合でもありました。

 最後ですが、僕自身はかなり盛り上がっていたオリンピックでしたが、では僕の周りではどうだったかというと、それがあまり盛り上がっていないんです。NBC以外では全く関係ない番組を流しているし、ラボも大学もオリンピックの話なんかほとんど聞こえてきません。internationalの学生が集まると、盛り上がるのですが・・・ 英語の先生のValerieによると、みんな自分の生活が最も大事なので、自分に関わってくることには関心を寄せるが、そうでないことにはあまり盛り上がりを見せないのだそうです。とはいえ、始まったfootballはえらい盛り上がっていますけど・・・ 今度のSLC 冬季オリンピックはどうなるのでしょうか・・・ そうそう、今日先ほどヤンキースとマリナーズのプレーオフ第5戦をテレビでやっていて、偶然つけたところで佐々木投手が投げていました。4点差だったこともあり、無事セーブを上げることが出来たんですが、彼、本当にすごいですね。プレーオフも含めて、勝ち試合になるとほとんど投げて、確実にセーブを取っています。日本で佐々木投手と言えば体も心も大きな印象ですが、その彼でさえ、テレビでアメリカの選手と一緒に移るとえらく小さく見えます。そんな厳しい環境の中で頑張っている同胞を見ると、僕も燃えますね。僕もそろそろ論文をまとめる時期になってきたので、これからなおいっそう頑張っていきたいと思います。では、今回はここまでです。次回は秋の新番組が始まってきているので、それを含めてテレビの話をしましょう。

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