Politically incorrect


 みなさんこんにちは。Utahは現在めちゃ暑いです。昨晩は眠れませんでした。
日本は小泉首相が誕生したそうですね。この間ラボのTimに今度の首相はどうなんだ?と聞かれて、「少しは期待できそうな人だよ」と応えておきました。実際の所はどうなんでしょうね。こちらでは、Ichiroが大活躍していて、TVの野球中継を見ていると、アナウンサーがIchiro!と連呼するのでびっくり。彼はやはりreal thingでしたね。その活躍には本当に勇気づけられます。僕も頑張らなくては。あ、そうそう、僕のお気に入りのUの体操選手、KulikowskiさんはNCAAのBalance Beamでチャンピオンになりました!

 さて、今回はpolitically incorrectの話です。これは何かというと、日本語では表現しにくいのですが、「昔はよく使われていたが、現在は世論の変化で言ってはならないことになっている言葉」ってなところでしょうか? 一例で言うと、黒人のことを、Negro(Nigger)というのはもってのほか、Blackと呼ぶのもあまり好まれません。では何て言うかというと、African Americanです。気をつけて欲しいのは、Negroというのは差別用語と見なされ、もしAfrican Americanの前でこの言葉を発すると非常にまずい雰囲気になります。英語教室の先生のValerieはAfrican Americanの男性と2年前に結婚しましたが、「もし私をNegroと呼んだら、即離婚だ」と言われたそうです。まあ、ラップmusicなどでは、さんざんこの言葉使われていますが、もしアメリカに来ることがあれば、絶対にこの言葉を使わないようにしましょう。

 他の例で言いますと、アメリカの原住民のことをインディアンと呼んでいましたが、今はそれはpolitically incorrectであり、native Americanと呼ぶのがふさわしいのだそうです。また、ゲイの人たちのこともできれば、alternative lifestyleと呼ぶ方がよいのだそうです。

 最近こんなことがラボでありました。3月から4月一杯、僕はAnnaという非常に優秀なrotationの大学院生の女性と一緒に仕事をしていました。彼女はChicago出身で、今まではoil companyで働いていたのですが、将来を見いだせなくて大学院に入ってきたという熱心な学生さんです。ボスが、今度のrotation studentは今まで持った学生の中でもbestだ!と太鼓判を押していたので、受け持つ僕の方も緊張していましたが、実際話をしてみて、とても感じの良い学生さんであることが分かりました。おかげで先月までの2ヶ月間とても充実した時間を彼女と過ごすことが出来ました(あ、彼女は既に結婚しています)。すっかり仲良くなったので、いろいろアメリカの諸問題の話をしたり、彼女のoil companyでの出来事を聞いたりして、こちらも随分勉強させてもらいました。さて、ある4月のgroup meetingで、僕らはいつものようにラボのキッチンに集まって、仕事の報告会をしていました。話が少しそれて、あるタンパク質の構造が何に似ている?というような話題になり、ボスが「これは、トマホークみたいだな」と言いました。と、その時、Annaが横から、Hey, it is politically incorrect, right?と口を挟んできたのです。ラボのみんなも、what?ってなかんじで、ちょっとびっくりしていたのですが、ボスは、Yeah, well, then let's say, this is like, hatch. How about that? と応えました。それでその場は流されましたが、僕は何の事やらさっぱり分からずきょとんとしていました。そこで、後で辞書で調べてみると、トマホーク:tomahawkは、native Americanが武器・生活道具として用いる斧のことを指しているのでした。でもなぜそれがいけないのか今ひとつ納得いかないので、翌日Annaに尋ねてみると、「tomahawkはnative Americanが闘いに使っていたので、彼らの”原始的な”生活をイメージさせ、それがかつて彼らを差別する言葉の一部として使われていたため」politically incorrectなのだそうです。トマホークといえば、戦闘機というイメージしかないので、こんな深い意味や歴史があったとは、想像もつきませんでした。

 こんな事があったので、前にふと思ったことが再び頭によみがえってきました。それは、プロ野球チームの名称のことです。僕は新聞のスポーツ欄が好きでよく読んでいて、最近特にIchiroやShinjoの活躍もあり、野球のスコアをほぼ毎日チェックしているのですが、その中でUSに来た当初ちょっと不思議に思っていたことがありました。新聞では、リーグの順位表はチーム名でなくホームグラウンドのある街の名前で表記されます。例えば、American leagueのWest divisionだと、5/12/01朝の段階で、1. Seattle, 2 Anaheim, 3. Oakland, 4 Texasと言う形になります。その一方でスコアはチーム名で表記されています。例えば、Mariners 7, Blue Jays 2と言ったように。ですから、最初はどのチームがどこの街をホームにしているかを知らないと、順位が分からないわけです。まあ、これはすぐになれて分かるようになりますが、どうしても謎だったのが、Atlanta Bravesだけどちらも地名で表記されていたのです(今はそうではありませんが)。それで、Valerieに聞いてみると、Bravesと言うのもnative Americanの戦士を意味する言葉で、そこから派生して乱暴者という意味の差別用語になっていたのだそうです。だから当時新聞ではBravesと表記していなかったのかもしれません。Annaによると、数年前NFLのチームの名称がnative Americanを侮辱するということで大きな問題になったことがあるのだそうです。言葉にsensitiveになってきたのは、最近の傾向なのだそうですが、多くの人種が住んでいるアメリカのもつ、根深い問題を提起しているようで興味深かったです。

 このPolitically incorrectという言葉自体、最近の流行のようで、ネットワークのABCでは、Politically incorrect with Bill Maherという人気番組があるくらいです。僕は残念ながらこの番組をしっかり見たことはないのですが、なかなか面白いという評判です。

 というわけで、今回はここまでです。

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