Volleyball観戦


 こんにちは。Utahは先週かなり雪が降り、街はすっかり冬化粧しました。これでオリンピックのための準備も一安心ですね。今週から各地のスキー場もオープンしました。さて、今回はいろいろ書きたいことがありますが、記憶の新しいうちに先日見に行ったNCAA Women's Volleyball championshipの話をしたいと思います。

 文系に見える私も学生の頃は長い間バレーボールをやっていました。中学、高校、大学の教養の2年間の合わせて8年程です。ですから、未だに日本のバレーボールだけはチェックしています。先日も日本でグランドチャンピオンズカップが開催されていた様ですね。残念ながら男子の結果はかなり悪いものだった様ですが、田中監督は新しい選手を数多く試しているそうなので、これからのチームが期待されます。僕がアメリカにいる間にバレーの名門チームが次々と無くなり、国内の状況はかなり厳しいものになっている様ですが、バレーの面白さを多くの人たちに理解してもらうためにも、全日本のメンバーには頑張って欲しいものです。

U.S.およびUtahのvolleyball事情
 ところで、University of Utahには男子のチームはなく、女子のvolleyballのチームがあります。アメリカでは西海岸でバレーボールの人気があるようで、NCAAの多くのチームが西側のstateにあるそうです。特に僕のいるUtah州は女子のvolleyballが盛んです。ついこの間まで、高校生のリーグ戦と決勝トーナメントをやっていて、かなり盛り上がっていました。地元の新聞でもその模様を大きく取り上げていました。一方、アメリカではバレーボールは男性のやるスポーツとしての人気はあまりないようです。その点はサッカーと同じでしょうか。ちなみにUのサッカーのチームは女子だけです。話によると、男性に人気のあるスポーツはfootballとbasketballで、soccerやvolleyballはどちらかと言うと女性向けのスポーツとして捕えられている様です。本当はこちらでもindoorのvolleyballを自分でもやりたいなと思っているのですが、なかなかその機会がありません。

 さて、そんな中先々週の英語のクラスの時にValerieが、UのWomen's basketballの試合のチケットが安く手に入るので、興味のある人は行ってみない?というので、そういえばbasketの話はよく聞くのにUのVolleyballのことは聞かないなぁと思いそれから少し調べてみると、volleyballのシーズンは終わりに差し掛かっていて、先週の木・金に大学の中にあるvolleyball用の体育館でNCAAのchampionshipの地区予選が行われるとの情報を得ました。Utahはこれまで23勝6敗で今期は調子がいいようです。Uの いるintermountain leagueでは、Brigham Young Universityが歴史もある強豪で、なかなかUはBYUを倒してNCAAのbest16リーグへ行けなかったようなのですが、今年は地区予選がホームで行われることもあり、またチームの仕上がりもよいらしく、期待が持てるとのことでした。

college sportsについて
 ここで、University of Utahのスポーツチームに関して少しだけ話しますと、University of Utahの名前でNCAAのchampionshipを争っているチームにはUtesというニックネームがつけられています。これはfootballでも、basketballでも同じで、みなUtesです。BYUならCougars, Utah State UniversityならAggiesという感じです。このチームには日本の一般の大学の体育会チームと違い、一般の学生は入部することがかなり難しく、そのほとんどがfellowshipをもらって大学にその種目をしに入学してくる選抜されたメンバーなのです。ですから、新しい選手が入ってくる時、「入部する」という表現ではなく、'U hired new comers'と、「新しい選手を大学が雇った」という表現をしています。Uにも10をこえるオフィシャルのクラブがありますが、その中で特に人気が高いのが男子ではfootballとbasketballで、女子では体操です。前にも書きましたが、女子の体操は本当に強くて、NCAAでも何度も優勝していて、観戦のための年間チケットも売り出されています。アメリカの女性のcollege sportsでも平均観客動員数が最も多いのがUの体操チームなのだそうです。男子のfootballも弱いながらもかなりの人気で、footballが行われる土曜日には、駐車場があっという間にいっぱいになり、道路もあちこちで交通整理をやっています。やはりアメリカ人にとってfootballは最も親しまれているスポーツで、Uのfootballチームは、Salt Lake Cityに住む人にとっては「おらが町のチーム」と言うことなのでしょう。日本で言えば、高校野球みたいなものでしょうね。またbasketballも人気が非常に高いです。女子のチームはまだ成績を残せていないので男子ほど観客を集められない様ですが、男子は4年前にNCAAのchampionshipで準優勝になった実力を持ち、優秀な選手が集まっているようで、Utahのprofessional sportsでもっとも有名なbasketballのUtah Jazzと共に毎試合多くの観客を集めているようです。Volleyballに関してはそういえばあまり話を聞かないです。ただ、先にも述べたように、Utahのhigh schoolのレベルはかなり高いようで、先のシドニーオリンピックでレフトを務めていたTomはSalt Lakeの出身だそうです。

試合会場と試合開始まで
 と言うわけで、あまり予備知識無しに会場へ向かいました。basketballや体操の会場になっているHuntsman centerはドーム状の体育館で、1万人以上も収容できる、Uの学生なら誰でも知っている建物なのですが、volleryball teamの本拠地はCrimson courtというHuntsman centerにくらべるとマイナーなところなので、僕も最初はticketing officeに電話しないと分かりませんでした。このcrimson courtはHuntsman centerのそばにあるHPER complexの中にあるのです。早速木曜の晩に出かけてみると、普通のビルのような入り口から入っていき、階段を下ると右側に中学の体育館くらいの大きさのコートがありました。入り口で$6のチケットを買い、入場します。まん中にバレーのコートが作られ、それを取り囲むようにして階段状の観客席が作られていました。ざっと見て1000人くらいは収容できそうな感じです。コートと観客席の間があまりないので、公式練習の時のスパイクがどんどん観客席に跳んできます。こんなに近くで見られるなんて!と気分は現役に戻って、かなりわくわくしながら前から5番目くらいの席に着きました。客の入りは良くて、殆ど埋まっていたと思います。こちらでは試合を見ながら楽しむと言うことができるように、体育館のすぐ隣にsnackの販売コーナーがあり、おばあさん達がサンドイッチなどを売っていました。試合が遅くから始まるので、ここで軽食を買って、試合を見ながらかぶりついている人も多かったです。コートのエンドラインの後側にUのマーチングバンドが陣取り、準備をしていました。廊下には華やかなチアガール達が待っていて、僕もかなり盛り上がってきました。少ししてコートに選手が入ってきました。それを見て思ったことが、「選手はみなカッコいい!」。最近の傾向なのか、ユニフォームは体にかなりフィットさせたものでした。バレーと言うとブルマという印象があるかも知れませんが、最近はショートパンツで、とても動きやすそうです。誤解を招かないようにしたいのですが、一部の人がいうようないやらしさは全くなく非常に健康的で美しい。チアガールが「かわいらしい、セクシー」という感じなのに対し、まさに「カッコいい」というのがぴったりの言葉ですね。

 試合は木曜の晩が2試合。NCAA first roundの第一試合は、BYU vs Utah State Universityで、第2試合がTexas tech University vs University of Utahでした。この日の試合に勝った2チームが金曜日にbest 16をかけて戦うことになります。僕は結局2日とも行ってきました。僕らは第1試合が始まる直前に会場に着いたので、僕らが席に付いたと同時に国家の斉唱が始まりました。さすがにHuntsman centerのような大きな会場ではないので、歌手が出てきて歌うことはなく、国家のテープが流れてみんな国旗が飾られているところを向いて、手を胸に置き真剣に歌っています。いつも思うのですが、こういうところで、愛国心を育てている気がしますね。どんな競技でもこの部分だけはいつも行われているのですから。日本で君が代斉唱なんていっても相撲くらいなもんではないでしょうか? この国家斉唱が終わると、短い公式練習があり、その後に選手の紹介があります。最近の日本でもやりはじめているようですが、ベンチに入っているメンバーが一人ずつアナウンスにより紹介され、エンドラインに並んで行きます。まずはアウェイのチームから、先発メンバー以外の紹介があり、そして先発メンバーの紹介があります。先発になると歓声もひときわ大きくなります。続いてホームのチームの紹介が同じように行われます。全選手の紹介が終わると試合開始のホイッスルが鳴ります。

試合が始まって気付いたことと、試合中の会場の様子
 面白いことに、アメリカのcollege volleyballでは少しルールが違うようで、サーブ権に関わらず得点できるのは同じですが、30点先取した方が勝ちとなります。第5セットは15点先取、ジュースになった場合は2点差が付くまで試合が続きます。あと、気付いたのはラインズマンが2人しかいない。コートの対角線上に一人づつ配置され、ひとりでエンドラインとサイドラインを担当しているのです(大変だ)。あと、リベロの制度がない。そのかわり、どうやら前衛だけの選手、後衛だけの選手と言うのが存在し、前衛だけの選手がバックに下がる時に毎回後衛だけの選手と交代していました。そのため、Uの場合、セッターが二人いるのですが、片方のセッターが前衛に上がる時にライトの選手と交代し、同時にバックに下がる対角の選手ともう一人のセッターと交代するという2枚替えを毎回行っていました。このおかげで、Uは必ず3枚前衛に打ち屋が存在することになります。こんなルールは始めてみたのでなかなか面白かったです。あと、第1セットと第2セットの間は2分程の休憩があるのですが、2セット目が終わると、選手が体育館の出口へ向かって走っていき、10分間の休憩になります。これは日本の大学バレーでは見なかった光景なのでびっくりしました。5セット目の前には何分か忘れましたが少し長めのインターバルが取られて、会場ではYMCAのテープが流れて、全員総立ち、みんな'Y' 'M' 'C' 'A'と踊っていました。Uの出てくる試合では、試合開始前にUtesの応援歌がブラスバンドの演奏とともに流れ、みんな総立ちで'GO UTES!'とshoutします。これがなかなか気持ちいいんです。これはUがセットを取ったときも、同じようにやります。応援の仕方もある程度形があるみたいで、バンドの演奏もこのUtesの応援歌以外にもう一つあって、'U' 'T' 'A' 'H', 'UTAH' fight! fight! fight! というのがあってこれがまた楽しかったりします。タイムアウトの時やセット感の休憩の時には、チアガールがコートの上で演技をします。これがまたすごい。マッチョな男子の応援団員の片腕の上でびしっと立ってバランスとったり、ポーズを決めたり、とにかく物凄い。さすがにバレーの選手の前では小さく見えますが、それでも日本人の標準くらいの背はある小柄な女性が軽々と持ち上げられいるのには本当にびっくりしました。一方観客の方はどうかというと、これまた面白い人が結構いて楽しめます。ブラスバンドやチアガールたちのリードに従って応援するだけでなく、exciteして吠えまくっている男性がいれば、GO UTAH!とshoutしているおっさんやおばさんもいました。僕もだんだんエキサイトしてしまい、周りを一切気にせず「なにしとんねん!」「セッター前やで!」「足動かせや!」「ここやで、ここやで、おちついて!」と日本語で大声出してしまいました。面白いもので、スパイクが決まったりレシーブが上がると「YES!!!」と周りと一緒に叫んでいました(これだけは言いやすい、でも最初は「よっしゃ!」とか言っていた)。タイムアウトになると、周りにいた子供達がチアガールのダンスにあわせて踊っていました。笑ったのは、ジャンプサーブやかなりいいサーブを打つUの相手チームのメンバーが、サーブを打つのに合わせて、「Ooh....... Utah!」と叫んでいる人がいっぱいいたこと。日本でいう「ソーレ」(これは日本選手がサーブを打つ時に応援の意味でやりますよね)とはちょっと意味が違って、プロ野球の阪神の応援で昔よくやっていた、「うー 三振!」みたいな、ミスを願う?やつなんです。それから観客はたとえ相手チームであれ良いプレーが出ると立ち上がって拍手をし、応援しているチームでもしょーもないお見合いみたいなミスがあると、「ブー」とやってました。極め付けは、自分の応援しているチームがセットポイントになると、みんな総立ちになること。歓声もひときわ大きく、手拍子を始める人さえいます。そうしたある意味恐いくらいの雰囲気の中でセットポイントを迎えるので、アウェイのチームはかな〜りやりにくいんではないかなと思いました。会場がそれほど大きくなく、選手と観客の距離が近いこともあり、これはかなりプレッシャーになりそうです。実際、セットポイントになると数回のサイドアウトで決まっていました。あと、監督はUは女性が、他は男性がやっていて、USUの男性監督はかなり試合中エキサイトして審判やチームのメンバーにかなり怒鳴り声をあげていて、すごい迫力でした(高校時代を思い出しますね)。試合結果は、BYU vs USUは2-3でUSUが勝ち、U vs TTは3-0でUが勝ちました。金曜日は3-1でUが見事USUを下して初めてbest 16に入りました。

プレーを見ていて思ったこと
 ここからはややマニアックな文になります。
試合を見て感じたことはいろいろあります。まずは「さすがに選抜された人たちで構成されたチームだけあってレベルは高い」。アメリカでは高校までは一人でいくつもの競技をやっていることが普通のようで、大学で専門的にやりはじめる様です。従って見ているとまだまだ伸びそうな選手が結構いました。しかも背が非常に高い。低くても僕と同じくらい(つまり170cm)です。UとBYUはとくに大きな選手をそろえていて、180cm以上の選手が登録されている15人中9人。しかもひょろっとしているんではなくみんながっちりした体格です。試合前のスパイク練習を見ているとたたき落とすスパイクはかなりの重さがありそうでした。
 「今の時代はどうやらブロード全盛」。これは日本の方でもそのようですが、センターからライトへ流れるブロード(走り込み、片足で踏み切る)が本当に多い。試合前の公式練習でもブロードを打たせていました。かつては日立にいた小高選手が得意としていたこの攻撃、大林選手も良く使っていてみなさんも知っているかも知れません。試合の中でも、あ、次ブロードやなと、僕でも読めてしまいます。僕の周りではあまり使われていなかったので見ていて新鮮で面白かったです。
 「荒削りなのかも知れないが、スパイクのフォームが少し変な人が意外に多い」。男子で言うと韓国のシン・ジンシクのような、振り回す打ち方の人や、かぶってしまっている人がいて、せっかく身長が高くて体も大きくパワーのあるスパイクが打てているのに、ふかしてしまったりネットにかけたりしていました。また、ジャンプもあまり高くなく、そのせいか体重の乗った「どかーん」というスパイクが楽に打てそうなのにそれがあまり見られませんでした。バチンというきっちりとボールをミートした気持ちの良いスパイクもあまりなく、スピンのかからないボールになっていたりして、勿体無い気がしました。だからかもしれませんが、Uのエースがオープンから打つスパイクがばしっと決まった時、観客の反応もとても大きかったです。あと、逃げのフェイントがどのチームにも結構見られて、「今のは打たなあかんで」と日本語で何度も叫んでしまいました。
 「セッターのトスは思ったよりとてもきれいだが、もう少し2段トスは高くしてもいいのではないか?」。どのチームのセッターもBYUをのぞいて170cm台で、背もあるしハンドリングもとても柔らかできれいですが、どういうわけか2段トスが低い。早い攻撃にしようとしているのは分かりますが、なんだかかえってアタッカーが打ちにくそうでした。高いトスの方が時間のある分高くジャンプでき、体重も乗ると思うので、なんでなのかなと思いました。
 というわけで、我がUは見事勝ち抜いてNCAAのchampionに向かってこれから戦っていくわけですが、これから先勝っていくためには、コンビミスによる連続失点をなくすことを直していくことが大事な気がしました。欲を言えば、どのアタッカーも素直に正面に打ち過ぎているので、もう少しひねったり左右に打ちわけるようにすれば、ブロックにかかることも減るんではないかなと思いました。たてBも含めてセンター攻撃が要所で決まっており、高さを生かしたブロックもかなり決まっていたので、自滅する単純なミスをできるだけなくしていけば、まだまだ楽して勝てそうな気がしましたね。

college sportsを見ていて日本のスポーツに付いて思うこと
 最後に、思ったことの一つとして、小さい会場とは言えこんな大歓声の中でプレーできる選手達は本当に幸せなのではないかなと思いました。地域に密着しているということもあるでしょうが、日本にいた頃見たVリーグ女子の決勝リーグで、あまりの観客の少なさに悲しい思いをしたことがありました。日本の場合、観客の集め方が少し変で、国際試合になるとアイドルを招いて試合の前にコンサートにしたり、今回のグランドチャンピオンズカップの場合はバラエティー番組にしてしまったりと、バレーボールというスポーツそのものでなくまるで芸能の一部みたいに扱われてしまっているのが、僕としては非常に残念なのです。プレーでなく顔で評価されてしまったり、若い女性のファンがあまりに多く会場で黄色い声援しか聞こえないことやサーブの度にフラッシュが炊かれてしまうこと。それにくらべると、こちらではお年寄りから子供まで、幅広い年令の観客がたくさん集まり、その誰もがバレーの試合そのものを楽しみにきて、実際にみんな非常に楽しんで帰っていってることを思えば、国の違いはあれど、観客とプレーヤーの満足度と言うのはこちらの方が深いのではないかと、思ったりもしました。観客もただ座って見ているだけでなくブラスバンドやチアリーダーにリードされた応援を楽しみ、観客も体全体で試合を楽しむことができる、college sportsのシステムは、日本でも模索できることの一つのような気がします。また、その日の感動や興奮が、次の日の地元の新聞や大学の学生新聞ですぐに味わえることも一つの楽しみであります。熱心なの人のために、会場ではベンチ入り選手の名前とスコアをつけられる表を配っていて、決めたスパイクの本数、ブロックの本数などを自分で記録することもできます。ある選手が気になったら、家に帰ればWomen's volleyball teamのweb siteで選手のそれまでの経歴、データ、それにチームの歴史も分かりやすく数字で示してあって、さらに深く自分の興味を満たせるようになっています。これはあくまで表面に見える僕から見て良い点であり、様々な悪い点もあるでしょうが、スポーツを楽しむことに関しては、アメリカ人に学ぶ点はたくさんある気がしました。

 というわけで、ついつい自分のやっていた競技なので長く書いてしまいました。でも見ていて本当に面白かったです。これからも応援して行きたいですね。

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