最近の話題など


 みなさんこんにちは。このところ気持ちが乗らず、更新を控えていました。今回はこのところ考えたり思ったりしたことを書いてみたいと思います。

デートレイプ
 4月中旬に知り合いに誘われて、大学の寮のミーティングルームで行われた「デートレイプ防止ワークショップ」に行ってきました。参加前に聞いていたテーマは、「異なる人種間でのデートとそこで起こる問題」。どうしたら安全につき合うことができるか、ということを、心理学専攻の日本人留学生の女性(僕より年上)が中心になってディスカッションが行われました。思ったより少人数で、僕が意見を言う機会も多くて面白かったです。まわりがアメリカ人白人女性ばっかりで、4人だけが男でした。悲しいことに、具体的な数値は忘れましたが驚くべき数のレイプが、アメリカでは起こっているそうです。参加者の多くを占める女性の多くが、レイプされた知り合いを持っていることにも驚かされました。ワークショップでは、デートの際にどう言う形でセックスに至るのか、どこでコンセンサスが必要なのか、ということをグループごとにシミュレーションしたり、お互いの意見を言い合ったりしました。性に対する考えが日本よりは開放的なアメリカでは、mix signalは禁物ですね。 せっかくいい雰囲気になっているのに、noなどというと、彼を怒らせてしまうのではないかと、怖がってしまい、本当は絶対したくなかったのに意志に反してやってしまった、そして自分は大きく傷付いてしまう。ある女の子は、大体態度でわかる、といいますが、少し気にいった男性と手をつないだり体が触れあうのは全く問題ないのだそうです。いいと思えば彼の体のあちこちすべてを触りまくるとのこと。明らかになったのは、mix signalが多くの誤解の元であること、言葉でOKを出すのがお互いに難しいこと。「キスしても良い?」とか、確かに聞いたりするのはあまりないのかもしれません。しかし、オーガナイザーの言いたかったことは、「話をすること。嫌な時はNOということ」でした。僕の韓国人の女性の友達は、初めてアメリカ人の男の子とつきあったとき、彼のセックスに対する考え方が、保守的に育てられた自分達とはかなり違って驚いたと話してくれました。「セックスをすることで、お互いのことをもっと知ろうと思えるようになるんだ。セックスしてお互い裸になればもっと自分をさらけ出せるよ、これはコミュニケーションの一つなんだ」。

 しかし僕にとって気になったのは、ここで取り上げられている多くの事例が、見知らぬものどうしの間で起こっているものではないということでした。レイプと言うと、昔、織田裕二と常盤貴子主演の「真昼の月」というドラマであったような、女性一人が全く見ず知らずの男性数人に襲われて犯される、ということなのだろうと思っていました。ところが、アメリカで起こっているのは、つき合っていて、すでに体の関係もある二人の間にもおこることなのです。僕の極端な解釈なのかもしれませんが、コンセンサス(同意)のないままに、セックスを行うとそれはレイプになってしまうのです。従って、カップルの間で起こることもあれば、結婚している二人の間でも起こることなのです。今回も取り上げられていたように、最近大きな問題になっているのは、デートの後のレイプだそうです。日本だと「送り狼」といわれるものですね。お互いに知っている二人。パーティではしゃいでお酒も入り、なんとなくそんな雰囲気になってしまったとします。でも女の子はNoと言わないので、男の方はそれをいい ことにどんどん押してしまい、セックスまで行ってしまう。女の子の方はとても嫌だったのに、言い出せなくて、そのままやってしまう、ということが多いらしいです。だから、女の子の方は、すごく傷付いて「レイプされた」、男の子の方は「Noと言わなかったし、嫌がっているように見えなかった」と解釈してしまい、普通のセックスをしたつもりがレイプになってしまった、というケースが多く報告されているようです。この場合、怪我をしていないので、告発しても傷付くのは女性の方になってしまいます。そこが大きな問題となっているのです。

 僕の好きなテレビドラマに、Law and order: Special Victims Unit(金曜9時NBC)というのがあります。性犯罪を取り扱う警察の部署の物語です。今まで2年間ずっとみてきて、どれほどアメリカの都市で、性犯罪が大きな問題なのかを嫌と言うほど知らされました。特に今シーズンのラストエピソードでは、実際に大きな問題になっている、教会での性犯罪が取り上げられていました。少年が教会で性的に弄ばれ続け、それが明るみになった時、限りなく黒に近い牧師を追求して行くと、決定的な証拠が「懺悔の部屋での告白」として浮かび上がってきたと言う内容でした。最終的には、その内容が確認されるわけですが、教会側としては民間人が二度と懺悔の部屋に罪の告白に信頼して来れなくなってしまうことを理由に、かたくなに拒否します。最後にはこころある他の牧師さんの証言ですべてが明るみに出ます。問題の多いアメリカですが、こうして自国でおきた恥に対し、きちんとそして迅速にテレビ側の答えを示しているところに、感心しました。

Salt Lake Cityで起きた恐ろしい誘拐事件
 日本ではこの事件は話題になっているのでしょうか。1週間ほど前に起きたこの事件は、USA vs PortugalのW杯や、NBA final, NHL finalといった、世界やアメリカで今一番話題になっているニュースを完全に隅に追いやってしまいました。
 事件は6月5日の夜中に、僕の家からそう遠くないところにある、裕福で社会的にも地位があり成功した家庭(白人、モルモン教徒)の豪邸で起きました。この家庭の14才の少女が、夜中に9才の妹と一緒に寝ていたベッドルームからさらわれたのです。9才の妹は犯人を「白人男性で、年令は30歳を越えていたような感じで、一度も見たことの無い人だった。もしだれかに話したら、お姉さんは傷つけられるだろうと言われた」と証言しています。こわくてベッドの中で泣いていた可哀想なこの子は、3時間後についに両親に一部始終を話して、事件が明るみにでました。
 その日の晩僕は、サッカーW杯でUSAがポルトガルに歴史的な勝利を収めたことから、ニュースではどんなふうに取り上げられるのかなぁと、帰宅後夜のローカルニュースを付けたのですが、どのチャンネルもW杯どころではなく最初からこのニュースで一杯でした。この少女がどれだけすばらしい子だったかという、関係者の証言が次々と紹介され、ことの重大さがぽかんとしていた僕にもさすがに分ってきました。この少女を探すために多くのボランティアが現れ、翌日には街のほとんど全てと言っていいスポットに、彼女の顔写真入りのビラが貼られていました。連日僕の予想を遥かにこえる人数のボランティアが、彼女の捜索に力を貸していったのです。現在事件が発生してから10日を過ぎていますが、必死の捜索にもかかわらず全く情報が得られないと言う悲しいことになっています。どうやら日本で良く起きる身代金目的の誘拐ではなく、成功した裕福な家庭を壊すことだけを目的としたhate crimeか、かなり可愛いこの少女を弄ぶことを目的とした性犯罪ではないかといわれています。
 僕の住むSalt Lake Cityでは、毎週火曜日にmissing personのチラシがポストに入っています。Letter sizeのチラシに顔写真と名前、行方が分からなくなった日にちや本人の特徴などが書かれたものが毎週配られます。最初の頃はそれを見るのがとても恐かったです。最近は慣れてしまい、ちょっと見るだけで他へやってしまうようになりました。つい最近、新聞にinternetのおかげで、こうしたmissing personが少しずつ見つかる頻度が上がってきている、という記事を見たところでした。このことから、誘拐とか行方知れずというのは、アメリカでは頻繁に起きており、日本ほど大きく報道されることはないのだろうと思っていました。Run-awayといって、自分でどこかへいってしまうということも多くあるらしいです。ところが、今回はどうも様子が違うのです。僕の想像をはるかにこえるメディアでの大きな取扱い(今では全米でニュースが報道され、People magazineでも取り上げられていました)、地域住民が一致団結してこの少女を探すために力を貸していること(とにかくすごい数のボランティアと、どこに行っても見られる顔写真入りのチラシ)。何がこんなにこの事件を大きくしているのか、僕にとってはそれがかなり不思議でありました。

 この書き方でお分かりになるかもしれませんが、事件が発生して間もない頃は正直に言って穿った見方をしている自分がいました。毎週火曜日に送られてくるmissing personのチラシに載っている人と同じような事件なのに、なぜ今回だけこんなに取り上げられているのか? それは、「少女の育った家庭が裕福で実力者であるから、チラシを作ったりメディアを取り込むだけの力をもっていたからで、また誘拐された子は写真で見る限りかなり可愛いので、ジョン・ベネちゃんのときと同じく、メディアとしてもニュースにしやすかったからではないか? これがもし白人の有力者のお嬢さんでなかったなら、こんなに注目されなかったのではないか?」。実際、数日後にはボランティアをしている方達に、テレビのニュースのレポーターが、「あなたがボランティアしているのは、この少女が有力者の娘であるからなのか?」というような意味の質問をしており、当然答えは「誰の娘であろうが関係ないよ。人種や収入、環境なんて関係ない。とにかく壊れた家庭を何とか救いたいだけだ」というものでした。金曜日には、7年前に学校から帰宅せずそのまま行方が分からなくなった当時7歳の少女のケースが新聞に取り上げられていて、この子の両親は、なぜ当時今回のような人々の協力を得られなかったのか?と、悔しくてたまらない気持ちを紙面に載せていました。

 しかし、僕の穿った見方は、ラボでの会話で消えて無くなりました。ラボでランチを食べながら、ボスも含めたみんなで少しその話をしたのですが、とくに小さい女の子二人を持つボスにとっては、許しがたい事件だったようです。普段とても温厚で、どんなときもジョークを欠かさないボスが、珍しく暗い顔で語気を強めて言いました。「Seijiは子供がいないから分からないと思うが、この事件で家族は完全に壊れてしまい、二度と元通りにはならないんだよ。この9才の妹は自分のことをずっと責めながら生きて行くことになるだろう。父親の姿を見たか? 彼の心は完全に壊れてしまったんだよ。彼の気持ちは痛いほど分かるよ。何故こんなことが起きたのか、彼はこれから一生自分を責めてしまうだろう。家族をこんな卑劣な形で壊してしまうこの犯人は絶対に許せない」と。家族を何よりも大事にしているボスなので、彼の気持ちは良く分かりました。ボスの言う通りで、この事件のために、この安全なSalt Lake Cityですら、子供の寝室の窓を開けて寝ることができなくなってしまったといえます。多くのボランティアが現れたのは、一つはこの街がモルモン教の敬けんな信徒で占められており、教会を通じてそのつながりは家族のように非常に強くて、なんとかしてあげたいという思いが現れたと言うこともあると思いますが、重要なファクターとして、「次は自分の家に起こるのではないか?」という恐怖感があるのではないか、地域住民で協力し合うことで、次の事件を未然に防ぐことができるからではないか、と僕は思います。現在の日本ではあまり考えられないようなこの事件ですが、さすがに広いアメリカ、犯人が少女を連れてどこへ行ってしまったのか、今も全く分からないのです。身代金目的ではないために、犯人とのコンタクトは期待できず、絶望的な雰囲気が漂いはじめました。僕の知り合いの日本人の研究留学の方々にもお子さまをお連れになっているところが多く、彼等にとっても深刻な問題になってしまったのではないかと、暗い気持ちになりました。いろいろなことを考えさせる事件でした。

ワールドカップの温度差
 日本ではきっとものすごいことになっているのでしょうね。厳重すぎるのではないかと言われる警備ですが、オリンピックの開会式と同じような感じですね。インターネットで見てみると、会場では比較的スムースに入場/退場が行えているようで、また大きな暴動や事件もまだ起きておらず、取りあえずはイイ感じで進んでいるようですね。こちらでも僕ら日本人の間では大きな話題となり、先日のチュニジア戦の時は友人8人ほどで夜中にテレビ観戦し、ゴールの瞬間は周りに迷惑だと分っていながら叫んでしまいました。うちのラボでも、新聞から対戦表を切り抜いてキッチンに貼り、毎朝結果をつけています。デンマーク人を母親に持つ学生さんと、韓国人の学生さんと僕の間で、かなり盛り上がっていて、このところ毎日のように朝はW杯discussion timeとなっています。しかし、どうも他では盛り上がっていないようです。全試合がESPNというケーブルチャネルで放送されますが、夜中12:25, 2:55, 5:25からの放送なため、crazyな僕ら以外は殆どが関心を寄せていないような感じです。少し話題になったのは、USA vs S. KoreaのときのKorean playerたちのmocking performance(おちょくり)ぐらいでした。幸いなことに、誰もこのことに怒ったりはしていなくて、いやあなかなか面白くて良かったよ、という反応が多かったように思います。またJay Lenoが何か言うだろうかと思い、tonight showをみていましたが、彼はRussian riotのことをジョークに取り上げたくらいで、サッカーのことをほとんど取り上げませんでした。まあNBAのfinalがあり、Lakersが強すぎてNetsがボロ負けしていたので、そのことをかなり茶化していましたけどね。従ってW杯に夢中になっているのはどうやら我々外国人だけのような感じです。アメリカ人の学生さんに言わせると、team USAってとっても弱いんでしょ? だったら見ないよ、ってな感じですね。むしろ、なぜそんなにサッカーで盛り上がっているのか分からないようです。ボスもサッカーよりもバスケットの方が展開が速くて好きなのだそうです。1点の重みがものすごく大きいサッカーは、盛り上がりに欠けてしまうらしい。ヨーロッパや南米からの移民が多い国なのに、この反応は少し面白いなぁと思っています。
 それにしても、日本選手の成長ぶりは本当に嬉しいものがありますね。僕は普段サッカーを見ていないので、選手個人のことは分からないのですが、見ていて非常に堂々としているし、安心して試合を見られるような気がします。僕自身も励まされますね。また、韓国戦は観客がとにかくものすごい迫力だなぁと見ています。日本戦の方が大人しく見えます。とにかくこのままテロなどの事件が起きずに安全に試合が行われることを祈っています。そして日本チームの勝利も!

最近は・・・
 それでは僕自身はどうかと言うと、最近は実験が一進一退でなかなか最後のラインをクリアできず苦しんでおります。以前NYに行って友人たちと話をして刺激を受けたわけですが、なかなか結果のでない自分に非常に大きな焦りのようなものを感じています。Faculty candidateのseminarをこの冬に多く見てきて以来、自分のレベルの低さを再確認して、これからの2年がどれだけ大切かを痛感して、はたして自分がどこまで目標に向かうことができるのか、目標の修正や自分の位置の再確認をしています。この4年で大きく成長した日本サッカーチームを見て、自分はではこの3年でどうだったのかと、恥ずかしいような気分になってしまいました。さらにこのところまた英語ができなくなってきているのです。ある程度出来るようになったと思っていたのに、電話でこちらの言いたいことが伝えられなくて、向こうがイライラして切ってしまったり、友人とのパーティでうまくことばにできなかったり・・・ まるで来てすぐの頃のような英語力に逆戻りしてしまったのです。文章がめちゃくちゃで、lab meetingでも、メンバーが難しい顔をしながら聞いているのを見て、自分にずいぶんとがっかりしてしまいました。どうしてこんなふうになってしまったのか、その原因ははっきりしませんが、言葉を大事にしていなかったことがあるのかもしれません。分からなかった単語をそのままにしていたり、だいたい言っていることはわかるからそれでいいや、と深追いしていなかったことがよくなかったのでしょう。アメリカでの生活に慣れ、こちらの生活の気楽さを満喫している一方で、努力を怠っていたことは否めません。USでのfaculty positionを目指し、自国に戻ることを考えないで必死に研究に邁進している外国人には、気持ちの段階ですでに負けているのだと、思います。日本での就職先も限られた数の中での非常に厳しいセレクションを勝ち抜いて行かなければなりません。これからの2年間は、将来のための準備期間としてこれまで以上に気持ちを入れて行かなければならないと、思いました。

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