2008年 1月28日


気が付けば1月ももう終わり、卒論修論も締め切り直前となっています。ラボの空気も微妙に慌しいですが、それでも速報はやってきます。それでは感想など。

瀧口(陽)さん:Science vol.318 no.5856, 5857
グラム陽性菌であるA型連鎖球菌のピリの構造を解きましたという話。全ての二次構造がシートというのもすごいが、なにより新しいのはサブユニット内、間でisopeptide bondと呼ばれるアミノ酸の側鎖同士の結合が見られたということ。sortaseという酵素の働きによってLys、Glu間の側鎖同士で共有結合を作ってしまうらしい。ピリが一つのサブユニットが数珠繋ぎになっているだけなのにどうして繊維状の構造として保っていられるのかという疑問にも答えられそうです。ところで側鎖同士で共有結合を形成させられるということは、sortaseがisopeptide bondを形成させる認識配列が分かれば新たな修飾剤のタグかなんかとして応用できるんじゃないかなあ、なんて考えてました。

湯浅くん:PNAS vol.104 no.52
微小管にダイニンが房なりになった状態の構造をcryoEMを使って三次元再構成した、という話。ダイニンヘッドのMTに対する角度を調べ、(実験的根拠が僕にはよく分からなかったが)今までのモデルとは異なりヌクレオチドフリーの時にダイニンの結合角度が傾くというモデルが提唱された。ところでこの号には吉田賢右さんのところのF1Fo-ATPaseのUncI(c-ringシャペロン)の話(尾崎さんが2年くらい前に学会発表していた)が載ってましたね。コロキウムでやって自分が理解しやすいからという理由で論文を紹介するのがダメとは言いませんが(過去に自分も前科がありますが)、こういううちに近い分野の話も(一言だけでもいいから)できるだけ拾いあげるようにしましょう、湯浅くん。

本間さん:Cell vol.131 no.3,4, vol.132 no.1
福井大学の老木先生のところの研究で、K+チャネルKcsAのチャネル開閉時のゲートのtwistingを一分子で計測した、という話。シート状のナノゴールドをKcsA一分子に固定し、それにwhite-X-rayを当て、ゲート開閉時のビームの反射角の変化を調べることで構造変化を追ったらしい。msレベルの時間分解能で検出できるということで、ほぼリアルタイムでの構造変化が検出できるというすぐれものです。ただ微妙な構造変化をみる前提としてナノゴールドが結合させた対象から揺らがないように固定されている、ということがありますが、タンパク側にはCysを導入しているようですがブレのないように実際に固定する方法はどうなっているのか?というのが気になりました。

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