6月28日(By AK)


Nature(野村)
 一夫一妻のプレーリーハタネズミと複婚のアメリカハタネズミの配偶形式の違いを分子生物学の視点で見ましたという論文には一部の方々(特におじさんたち:伊藤注)が盛り上がってました。「プレーリー」と「アメリカ」では、つがいを形成したあとのバソプレッシンやドーパミンのレセプター発現に違いがあるそうです。複婚の「アメリカ」でこれらを「プレーリー」と同じような発現をさせると、なんと浮気をしなくなるそうです。
薬で浮気を防止する日もそう遠くないかもしれません。

Science(瀧口陽)
 細胞内でスタスミンがどのように制御されているかFRETで見てました。スタスミンのN末とC末にCFPとYFPをつなぎ、tubulin非結合型のリン酸化状態ではFRETが起きて、tubulin結合型の脱リン酸化状態ではFRETが起きないように実験がデザインされてました。間期では、伸長している先端部でスタスミンはtubulinに結合し、後ろではtublinに結合していました。分裂時には、spindleあたりではtubulinに結合していました。
スタスミンの構造(フリー状態の:伊藤注)が分かってないのにこんな実験をやってしまうなんて大胆です。

JBC(谷ヶ崎)
 HIVの逆転写酵素の保存性の高い領域にランダムに変異を入れてもあまり感染力は落ちないそうです。この柔軟性がHIVの強さの一つかもしれません。
 筋肉の中のグリコーゲンを分解する酵素がやっと見つかったそうです。こんな大事な酵素が今まで見つかってなかったということが驚きです。

PNAS(藤井)
 Racの構造を元にデータベースでRac表面にくっつくと推測される物質を検索することで、Racのinhibitorを見つけました。“バーチャルスクリーニング”というそうです。実際にヒットした物質の中からRacに結合する物質が見つかってます。
 Rh抗原で知られる赤血球表面タンパク質のRhタンパク質は今までメチルアンモニウムのトランスポーターと思われていましたが、今回の実験ではそうではなくてCO2トランスポーターということが分かりました。
Rh(+)の人とRh(-)の人ではCO2濃度に応じて生化学的になんか違いがあるのかもしれません。

Cell(小幡)
 免疫系ではタンパク質だけでなく糖も抗原として認識されるのですが、抗原提示細胞に糖抗原が取り込まれてT細胞に提示されるまでの過程をビジュアル化してます。タンパク質の場合と同じみたいです。

EMBO(稲葉)
 Trypanosomaの生活環におけるアクチンのはたらきを、RNAiでアクチンの発現を抑えてみてます。Trypanosomaはツェツェバエが媒介する寄生虫で、眠り病として知られています。ハエでは消化管にいて、ハエがヒトや牛や馬などを刺すことで感染し赤血球に寄生します。ハエ消化管内にいるとき、アクチン発現を抑えるとエンドサイトーシスやエキソサイトーシス、鞭毛根元にあるポケット(?)での取り込みがうまくいかなくなりました。しかし、赤血球中では分裂や成長には影響がみられず、細胞が多少大きくなる程度でした。
赤血球中ではアクチンではなく、未知のactin like proteinが分裂などにはたらいているのでは?と思わせぶりな論文でした。


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