2005年4月18日
楠本さん (PNAS: Vol. 102(03) 755, Zhao et al.)
 Bacterial therapyの話。癌治療のアプローチで、嫌気性細菌が癌細胞特異的に感染することを利用して、癌細胞をつぶすというもの。放射線治療や薬剤による治療に比べて特異性が高いので部位特異的に効き、周りの細胞に影響が低いことが利点だそうです。(そういえば友人が昔、マグネタイトとヒートショックプロモーターを組み合わせた部位特異的な癌の治療の研究をしていたのを思い出しました。)
この論文ではSalmonella typhimuriumを用いて、感染してもホストが致死とならない様な菌株をスクリーニングし(アミノ酸要求性の生育阻害で選択)、これをマウスに感染させて癌細胞が縮小する事を確認しています。直接癌細胞に感染させれば、なんと完全に消滅するそうです。
まさに毒をもって毒を制すですねぇ。

入枝君 (Cell: 119(1) 87, Bateman and McNeill)
 ショウジョウバエの目の分化の話。スクリーニングの結果取られてきたのはTSC1と呼ばれる遺伝子。この遺伝子が欠損すると早期分化が起こってしまうそうです。面白いことに、この遺伝子、インシュリンレセプター(InR)のkinaseに関わっていることがわかっていて、Growth等に影響がある経路の役者です。
この経路の役者が分化にも関わっているとは・・・。

百武君 (Science: 5707, 223, Andries et al., 258, Evason et al.)
 結核菌の薬の作成の話。R207910という薬剤がMycobacteriumのATP Synthaseに効き、増殖を妨げ、死滅させるそうです。Mycobacterium属 9種中7種、M. tuberculosis8種中8種に効果があったそうです。効果の無かった株に関してはATP SynthaseのFoに変異が入っていたそうです。
 薬で寿命でのばそう!線虫の話。抗けいれん剤である、Ethosuximideが線虫の成体に作用して、20℃環境下では17%、15℃環境下では35%寿命が増加したそうです。変異体での寿命への効果をふまえると、神経系に作用して寿命がのびているのではないかということです。
実際はどのように効いているんでしょうか?
殺すための薬(ホストを生かす薬ですが)、生かすための薬。

滝口金吾さん (Nature: Vol. 433 (7025) 488, Otomo et al.)
ActinとForminが共存した状態の構造の話。Actin filamentのB端をのばすのに重要なForminとActin filamentとが結合した実際の構造から、P端はActinが自由に結合できる形状であるのに対して、B端はForminでキャップされてActinが自由には結合できないことが明らかとなったそうです。また、構造に基づく変異体の解析結果も予想通りとなりました。
時間の関係で手短でしたが、染色体の話なども面白かったです。(Vol. 434 (7031) 325, Rosset al.)

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