2005年5月23日
坂野さん (NATURE (2005) vol. 435 no. 7037)
睡眠時間 が短くて済むショウジョウバエが単離できました、という話。
ショウジョウバエをEMS処理し、睡眠時間の短いmutant(mnsと命名)を単離。このmutantは単位時間あたりの睡眠回数はwtと変わらないものの、一回あたりの睡眠時間が短く、しかも睡眠の質はそう変わらなかった らしい。そしてこの株の変異はshaker geneという電位依存性K+チャネルにおちていたらしい。
電位依存性チャネルが睡眠時間に影響を与えるというのも不 思議な話だが、ともかく睡眠時間が短くて済むなんて素晴らしい!と思ったらこのmutantは寿命が短くなるとのこと。世の中うまくできてるものですね。ガックシ。

瀧口金吾さん (PNAS (2005) vol. 102 no. 15)
matrix metalloproteinaseと いうタンパク質について、異なる基質を結合させた2種のX線結晶構造と、NMRによる立体構造の3種を決定して比較してみました、という話。
過去に決定されたやはり基質の違うX線結晶構造も含めて比較したと ころ、backboneも含めてかなりの違いが見られたそうです。まあただでさえ溶液中では揺らぎが存在するわ けですし、基質が違えば構造も変わってくるのは考えてみれば当たり前なんですが、立体構造に疎い人間にとっては一つ立体構造が決定されればそれを絶対視し てしまうふしがあって、そういう意味では気をつけなければいけない問題ですね。
しっかしこの論文、構造既知のタンパク質に対して1Åクラスの立体構造を3つも揃えてくるなんて、大盤振 る舞いだな〜。

百武さん (Cell (2005) vol. 120 no. 1)
ニューロンがdendriteとaxonに分化する際に働くシグナル伝達経路において、CRMP2から微小管、そして分化へとつながる部分は既に決定 されていたのですが、さらにその上流の部分でGSK3bなどの因子が重要な役割を持つことが分かったそうで す。さらにこの論文と続きの論文で、CRMP2のリン酸化がニューロン分化に関与しているらしいと いうことも報告されているみたいです。
しかし個人的に目を引いたのはそのさらに上流にある因子、PTENでした。PTENって今話題になっている某事件のPTENですよね?


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