2005年5月30日
入枝君(Science: Vol.307 (5715)1630,Lelia Delamarre et al.)
抗原提示細胞ではリソソームによるタンパク質の分解が弱くなるというお話。
分解を弱くすることで抗原として提示するペプチドを残すのはよく分かる。しかしこの様に免疫のシステムを高めても、それを逆手に取って利用しようとするウイルスなんかが必ず出てくるんですよね。
いたちごっこは終わりそうに無いですね。
個人的にはカナリアの歌が、幼い頃真似て覚えた鳴き方の再編集だという話も面白かったです。”三つ子の魂百まで”は人だけではありませんね。(Vol.308(5724)1046,Timothy J. et al.)
楠本さん(Nature:Vol.435(7041)488, Ben D et al.)
コアラとユーカリの関係性についてのお話。
ユーカリはただコアラに食べられるだけではなく、コアラの嫌いな二次代謝物をため込む。大きなユーカリには比較的多くのコアラが集まるのが常だが、この二次代謝物が多い木にはコアラの数が少ない。この二次代謝物はかなり大きな影響を与えるようだ。
それより筆者たちが10年も頑張った事にもおそれいりました。
他に、HIVをRNAiで抑制しようという試みがうまくいかないのはHIVのmutationが速過ぎるからだが、HIVのRNAを保護するタンパク質を除去してやればRNAiが効くかもしれないという明るいニュースも紹介された。(Vol.435(7040)250)
薬師さん(PNAS:Vol.101(44)15585,Martin Hahn et al.)
TycA,B,Cはリボソーム以外でペプチド合成を触媒する酵素としてはたらくというお話。
TycAは1つ、TycBは3つ、TycCは6つのモジュールを持ち順番に受け渡されていくことによってペプチドが合成される。
TycAからTycB1に受け渡されるメカニズムや、これらの酵素がいつどこではたらいているのかなど、新たな疑問が山積みです。
他にはPEGとDextranを混ぜて膜小胞内をコンパートメント化したという話も面白かったです。人工細胞への夢が膨らみますね。(Vol.102(17)5920 M.Scott Long et al.)
瀧口陽子さん(EMBO:Vol.24(8)1537,A Roux et al.)
人工膜小胞(リポソーム)に結合させたビオチンを引っ張って単層のチューブをつくったお話。
重層ではなく単層のチューブができたところがミソらしい。SM, Chol.,DOPCの組成で、チューブにはDOPCが多いことなども調べられた。
膜のトポロジー変換を解明する一つの手がかりになるかもしれないですね。
他には、HSP90がN-WASPのdegradationを抑制し、活性化させるという話も紹介されました。アクチンの重合に関わる重要な制御なのではないでしょうか?(Vol.24(8)1577,EJ McManus et al.)
藤井(Science:Vol.307(5711)929,Masashi Kishi et al.)
人のSAD kinaseは神経細胞の樹状突起と軸索を分化させるというお話。
SAD kinaseを欠失した神経細胞では樹状突起と軸索の区別がなくなる。このkinaseは微小管結合タンパク質をリン酸化することで微小管の重合を制御して、この二つをそれぞれ分化させているのではないだろうか。
その他にV型ATPaseのK ringとF型ATPaseのc ringの構造を解いた話がありました。(Vol.308(5722)654,Takeshi Murata et al. / 659,Thomas Meier et al.)
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