2005年 7月 4日
当番が廻ってきたので、講評を覗いてみました。皆さんまじめに書かれていて結構なことです。と同時にいい講評を書かなければ、というプレッシャーも感じます。

稲葉くん(PNAS102 #14&16)
樹状細胞が熱やカプサイシンで成熟化する。(Basu et al. p5120)
これはフジテレビがほっとかないでしょう。
Herpesvirusがどうやって細胞の中をモータータンパク質を使って動くのか(動かされるのか)という話。(Luxton et al. p5832)
闘病中のK本さんのことを思い出しました。早く元気になって欲しいものです。
電位依存性のイオンチャンネルはどうやって電位を感じるか?(Horn p4929 & Gonzalez et al. p5020)
これは我々にとっても大問題です。この人たちは構造変化を生化学的に捕らえるべく、SH基の修飾実験をやったようです。こういった仕事は大いに参考になるところです。
ところで、この論文で取り上げられているPaddle modelですが、京大のF吉先生が「あんな構造はあり得ない」とおっしゃっていた構造と何か関係があるのかな?なんてことを考えていました。
お兄さん的なソフトなタッチで淡々と紹介していく、稲葉くんらしい「速報」でした。

檜作くん(Nature #7044)
ニュージーランドのmoa(「萌え」ではない)は長い時間をかけて成長したらしい。(Turvey et al. p940)
胚性幹細胞の話は最近ホットです。薬師が紹介したScience(#5729)の表紙は患者由来の核をボランティア由来の卵に移植(?)したヒト胚性幹細胞(韓国とアメリカのグループの共同研究)の話が表紙を飾っていました。月曜日の朝日新聞でもこの研究を引き合いに出しながら、日本における胚性幹細胞の研究に関する記事が出ていました。幹細胞はなぜ増殖し続けるのか?これにはmiRNAが関わっているらしい。(Hatfield et al. p974)
dicer-1をKOしたハエ由来の生殖系幹細胞では増殖を続けることができないらしい。やはり、RNAのようです。ちなみにこの研究も表紙を飾っています。
紹介されませんでしたが、p983の研究は私の先輩の仕事です。ナフテルピンという化合物はとっても役に立つ可能性があるようです。それをプレニル化する酵素もとっても役に立つ可能性があるようです。この酵素の結晶構造解析と反応機能の解析をされました。葛山さん、お元気ですか?(Kuzuyama et al. p983)
今回も(?)「速報」のあり様というものが議論されたように感じました。「担当者の独断と偏見に任され」るものの、「分野の違う論文にチャレンジして欲しい」のが「速報」の理念ではありますが、「聴衆のニーズ」を無視したプレゼンテーションは一般的には良くないということでしょうか。よりよい「速報」に向かって発展していくことを願います。
ただ個人的にはNatureという雑誌は日本語訳(約)があるので、「速報」で紹介するのは難しい雑誌だと感じています。

薬師(Science #5729)
ガッカリしたときに、脳の動きはどうなっているのでしょうか?(Minamimoto et al. p1798)
視床の一部が活性化されるようです。ガッカリしたときにからだが重いのは、脳からの命令があるということなのでしょうか。

坂野さん(Cell121 #5&6)
複雑な仕事を、要点を押さえながら、かつデータを紹介しながらわかりやすく説明する坂野さんの姿には脱帽です。
まず、Ron Valeさんのところの仕事。T cellのいろいろなシグナル分子に印を付けて一分子観察をしたようです。少なくとも私はマイクロドメインとラフトは同じものと考えていました。どうもこの論文では、マイクロドメインはあるだろうけど、ラフトとは違うモノだという主張をしているようです。(Douglass & Vale p937)
我々の求愛行動にはどのような分子が関わっているのでしょうか?ハエのfruitless遺伝子はalternative splicingを受けてメス型・オス型の求愛行動を規定しているらしい。この遺伝子産物は転写因子らしいのだが、発現は嗅覚ニューロンに多かったことから、フェロモンの嗅ぎ分けに等に関わる因子の発現を握っているのかも知れない。(Stockinger et al. p795)



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