2005年 9月26日
川岸さん Nature (Vol.437 No.7057 326&376)
新しいGenome Sequencingの紹介。この方法では塩基を判別する方法は従来通りのようだが、注目すべきところは断片化したDNA fragmentの1つをビーズに結合させ、そのビーズ周囲の液滴中でPCRを行えるようにしたこと。
この方法だと現在の100倍の速さでSequencingができるらしい。しかしまだ読むことのできるDNAの長さが短い、正確さに問題がある、など実用段階ではないがこれらが解決されるとSequencingがさらにお手軽に利用できるようになるのは間違いないと思う。
”より速く、簡単に、”を求める人間のアイデアにはいつも感心します。

百武さん Science (Vol.309 No.5733 491)
3つの異なった毒素を用いてSNARE proteinの働きを調べた論文。BoNT/A,BoNT/C1,TeNTはそれぞれ、Caイオン感受性を低下させる、Caチャネルの解放を抑制する、Caチャネルの解放を抑制しvesicleの成熟を抑えるという現象を引き起こす。
これらの結果から毒素のターゲットとなるタンパク質(それぞれSNAP-25,syntaxin,synaptobrevin)のはたらきが推定されSNARE の解明につながるでしょう。
毒も上手に使うと非常に役に立ちますね。

小嶋さん PNAS (Vol.102 No.27 9661)
Helicobacter pyloriが引き起こす胃ガンもしくは胃潰瘍の決定因子がわかったという話。
Helicobacter pyloriのCagAは転写因子であるNFATを活性化させ、その結果細胞の増殖が進みガン化の可能性が高まる。また逆にHelicobacter pyloriが出す毒素のVacAはNFATの活性を下げて細胞の増殖を押さえ込んでしまう。その結果細胞が減って胃潰瘍になる。これらのようにNFATを介したシグナルで胃ガンか胃潰瘍、どちらになるかが決められているらしい。
増殖と分裂の抑制という全く逆の現象を一種類の細菌が引き起こすというのがおもしろいと思いました。このメカニズムがわかったことで病気の治療や予防が一歩前進するんじゃないでしょうか。

入枝くん EMBO (Vol.24 No.16 2944)
Amyloid precursor protein(APP) という繊維を作るタンパク質の話。Drosophilaの脳を針で突き刺して(!)損傷させるとそこの皮質にAPPが局在し、神経が損傷部位に伸びるというもの。
その因果関係はよくわかりませんでしたが、なんだか大事な機能を担っていそうだということはわかりました。ほかにはいったいどこで何をしているのか、ちょっと疑問に思いました。



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