2005年11月 7日
11月に入り、朝晩の気温もめっきり低くなってきました。もうすぐインフルエンザの流行る季節になります。うちの祖母も予防接種に行ってきたといっていました。それはさておき、近頃流行(はやり)のインフルエンザといえばトリなわけですが、1918年にはスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザの大流行が起きました。第一次世界大戦の西部前線から爆発的に広がり、全世界で2500万人が死亡しました。日本でも38万人死んだそうです。当時の世界人口が12億人くらいらしいので相当な威力でした。
このウイルスはなぜそれほどの威力があったのでしょうか。当時の遺体からウイルスRNAを採取し、ゲノムが復元、解読されました(紹介小嶋(勝)さんNature vol437 no7060 P794news, P889letter)。そのゲノムはやはりトリインフルエンザウイルスとよく似ていて、昨今心配されているトリインフルエンザの大流行は現実にありえることを示しています。しかし、今回のゲノム復元、解読は今後の流行を防ぐために非常に有益な情報であるといえます。一方でバイオ兵器への転用という危険もはらんでいて、慎重な姿勢が必要とされます。
大流行といえば、数年前に流行したSARSの原因とされたコロナウイルスがどのように人から人に感染しやすくなったのかという研究が報告されました(紹介檜作君Science vol309 no5742 P1822perspectives, report1864)。ここでは、年度ごとに流行ったウイルスのスパイクの構造とそのリセプターの構造から原因を解明しています。怖いのは、進化が速く、アミノ酸一つの変異が感染力を大幅に上昇させてしまう事でしょう。

Bacteria colicinといえば、確かレバーみたいなcoiled-coilでOmpFに自身を押し込んでいくとかいかないとかいう眉唾なモデルのあるRNA制限酵素なわけですが、今回のPNASの論文ではcolicinのアンフォールドがどのように起こるか報告しています(紹介瀧口(陽)さんPNAS vol102 no39 P13855)。野生型とS-Sかけたアンフォールドしないcolicinを用いて実験したらしいです。その結果は、BtuBだけでなく、OmpFも必要でしょうという事でした。それにしても、何度見ても嘘みたいなモデル図ですよ、あれは。
モデル図といえば、仁君の紹介した、SecYEのモデル図は手書きでしたね(紹介谷ケ崎君 EMBO vol24 no19 P3380)。時代の流れに逆行するかのごとき行いだ、だがそれがいい。SecYの中をペプチドが通っていくのですが、その穴には栓があって、translocationの際にその栓が動くと主張していました。実験もおもしろく、SecYとSecEにシステインをいれ架橋させるのですが、立体構造解析では20Åも離れていて本来架からないのに、ペプチド存在下ではS-Sが架かり、translocationでのダイナミックな構造変化を示唆するデータを報告していました。


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