2005年11月14日
吉本くん Nature Vol. 437 No. 7063 & 7062
No.7062 pp.1173
ヒトのprotein-protein interactionを網羅的に解析しました、という話。
既 にクローニングされているORF 8100コの全ての組み合わせについてyeast two hybrid法で相互作用を調べたらしい。その組み合 わせ総数実に6600万通り!まあグループ分けによって組み合わせは相当減らしているようですが、それでもか なりの労力を要したのは確実でしょう。まさに努力賞の趣きですが、結果としては2800の相互作用が検出され、そのほとんどが既知の相互作用とは異なる新規のものだった様子。 しかしこれでも今回見つかったのは見積もりによれば全体の約1%に過ぎないそうで…interaction道はなかなか厳しそうです。
ところでこれ、細菌でやったらNature行くんでしょうか?

伊藤さん Science Vol. 310 No. 5747 & 5748
No.5748 pp.674
YersiniaのT3Sシステムのニードルの先端がこんな構造をしていました、という話。
ニードルの先にベー ス、ネック、ヘッドと名付けられた構造が電顕で確認され、この構造がLcrVというタンパク質に依存していることが分かったらしい。個人的にはこんな特徴的な構造が 今まで分かっていなかったのかという感じですが、ヘッドがちょうど返しのようになっていていかにも膜に突き刺さって抜けなさそうな構造をしています。
とこ ろでこの構造、最初ちらっと見たときにべん毛基部体に見えたのは私だけではないはずです。そのせいもあってこの構造全てがLcrV単独でできているとは思 えないのですが…。
No.5748 pp.670
V. choleraeの病原性を抑える新しいタイプの物質が見つかったという話。
この小分子virstatinは菌のgrowth自体は全く抑えない が、転写因子ToxTに作用してコレラトキシン産生を抑制するらしい。菌の成長を阻害するような従来の薬剤と は異なるアプローチの薬剤というのがウリみたいですが、菌の成長を抑えないのはかなり問題な気がします。
実際に使うとしたら即効性の薬剤として補助的に使 うことになるのでしょうね。

田島さん PNAS Vol. 102 No. 37 & 42
No.37 pp.13278
炭阻菌がhostに毒素を注入する際、pHによってhost側のreceptorを使い分けると いう話。
炭阻菌の毒素注入タンパク質PAはhostのCMG2あるいはTEM8というreceptorに結合してporeを形成し、effectorを注入するそうですが、その時に細胞のpHが6.0-6.5だとTEM8側、5.2付近だとCMG2側のporeからeffectorの注入が可能に なるらしい。
ヒトの細胞の話をしている以上、各器官とpHの関連や2つのreceptorの分布などが気になるところですがその辺はあまり詰めてないようです。これから追い追い やっていくということでしょうか。


BACK