2006年 2月 6日
今日は今年度最後の速報でした。今年度のみんなの速報を思い起こすと、タンパク質の立体構造の論文紹介が多かったような気がします。近頃、耐震構造偽造発覚とか、ホテル構造の違法改築とか、小泉構造改革とかがなにかと世間をにぎわせているようですが、科学の世界でも「構造」がひとつのキーワードのようです。
レベルの高い雑誌に掲載される論文は、その構造がただ解かれただけで終わらず、それまでの遺伝学的または生化学的実験により得られた知見と、構造から得られた情報がしっかりリンクされていて、さすが!!と感じました。今週の田島君紹介のDicerの構造もそうでした。DicerがdsRNAを25-27ntのdsRNA断片に切り刻むのですが、Dicerの立体構造をといたところ、25-27ntという長さはDicer内の2つのヌクレアーゼ活性部位間の距離にドンピシャだそうです(Science, vol.311, no.577, p195)。切り刻む長さはRNA側の配列によって決まるであろうと私は今まで思っていました。そうではないということでしょうか?あと、植物でのストレス応答因子DELLAって何の略ですか?
また、結晶作製と構造解析の技術は日進月歩で、やはりレベルの高い雑誌に載るものは高解像度もばっちり高いです。タンパク質に配位しているH2Oが見えるくらいの高解像度で見えたという話も速報でよく耳にします。では、その配位しているH2Oは反応に関係しているのか?というさらなる疑問に挑戦した論文がNature, vol.439, no.7072, p.109(祝☆ギプス解除本間さん紹介)です。FTIR差スペクトル分析の原理は理解できませんでしたが、H+やH2Oがどのように反応に貢献しているのかまで見えて分かる時代がとうとう来たようです。
タンパク質はダイナミックな構造変化(active form⇔inactive formなど)をともなって、その機能を果たします。条件を変える(基質、ATP、ADPなど)ことで、タンパク質はさまざまな状態で結晶化され、タンパク質の挙動の一瞬の姿は可視化されます。StaphylococcusのCNAによるコラーゲンハグモデルの話(EMBO, vol.24, no. 24, p.4224、寺島君紹介)では、CNAがちょうどコラーゲンをがっちりハグした状態(closed form)で構造が解けました。CNAは、鉄アレイのような立体構造をしていて、コラーゲンを抱きかかえるようにして鉄アレイが曲がり、さらに鉄球どうしの間でロックがかかることで宿主細胞組織にがっちりくっつくそうです。open formの早急な構造解明を期待します。
最後に構造の話ではないのですが、actinの話です。これも速報頻出テーマのひとつです。細胞に一定方向の張力をかけ続けると、張力に対して垂直方向にストレスファイバーが形成されるのですが、それはRho kinaseを経由するらしいです(PNAS, vol.103, no.44)。ストレスファイバーはRho kinaseによって形成されることはすでに分かっているので、なぜPNAS??と疑問に思いました。
今日の速報はイットウ賞の授賞式で締めくくられました。今やすっかり定着、恒例のイットウ賞授賞式です。イットウ賞論文紹介部門受賞の吉本氏、同じく講評部門受賞の寺島氏、おめでとうございます。
寺島氏は昨年の論文紹介部門受賞と今回の講評部門受賞で2冠達成です。そろそろ殿堂入りでしょうか?講評スタイルのマンネリ化を指摘された後の講評は少々辛いものを感じました。来年度もがんばりましょう!!
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