2006年 5月 8日

前回の講評で奇をてらったことをしてしまい、今回も新しいことをしたほうがいいのかと苦悩しています。こんにちはこんばんわ、寺島です。
 いきなりですが皆さん、講評って何でしょうか?
「講評‐指導的な立場から、理由などを述べながら批評を加えること。また、その批評。〜大辞泉より」 ということらしいです。つまり、指導的というところがポイントで、上に立った立場から人の発表に対して良し悪しをいわなければならないのです!…それはさておき、講評をはじめます。

坂野さんnature vol439 no7077 pp753‐
大腸菌のタンパク質分解酵素複合体ClpAPと基質を相互作用させるアダプタータンパク質ClpSの話。ClpSが基質のN末エンドのFLWF、RKを認識してClpAPで分解させている。
前回の分4コロキウムでClpAのホモログClpBについてやったので身近なネタでした。やはりポイントは芳香族と正電荷を持つ残基でした。これは、ClpBと結合する基質ペプチドに多いアミノ酸で、ClpBの方には保存された芳香族、負電荷残基があり、これが相互作用して基質を認識しています。ClpAからなる六量体リングはタンパク質をアンフォールドして、自身の中央孔を通して、ClpPにポリペプチドを渡し、分解します。そう考えるとN末に認識配列があるのはアンフォールドのために都合がよいのかもしれません。

本間さん science vol311 no5760 pp508‐
カーボンナノチューブにDNA巻きつけて二価カチオン加えたときに、波長とかエネルギーの変化を見てDNAのコンフォメーション変化を見ている。内容はよくわからなかったのですが、なんといっても工学的化学的な最新の手法で生物学的な問題に対してアプローチするというのが面白い。こういうクロスオーバー的な研究は、生物物理もそうだがこれからより盛んになる分野だと思った。
相変わらず本間さんの読む論文は多岐に渡るというか、馴染みのない分野というか、いつも何コメントしたらいいのか困ってる気がします。

田島さんPNAS vol103 no14 pp18602&18608
Caulobacterを使った細菌の細胞骨格(ペリプラズムの場合細胞骨格と呼ぶのか?)の話。MreCがペリプラズムでらせん巻いて形態維持に働いている。最近は猫も杓子もMreBで食傷気味なのですが(それだけ面白くてまだわかってないことが多いということではあるのですが…)、また新しい役者が出てきました。
ペリプラズムということで真核で言う細胞外マトリックス(例えばコラーゲン繊維)みたいな働きとかあったら面白いなとか思いました。多分すぐに新しい論文が出てくるだろうから、それを楽しみにします。

太田さん cell vol123 no6 pp1107
ユビキチンの基質への結合様式の話。太田さん、初めての速報発表はどうでしたか?
たぶん話のエッセンスとしては、適切な位置の基質K残基にユビキチンが結合し、それが種になって次々とユビキチンの結合がおき、ユビキチン鎖ができる。一個目のユビキチン結合はゆっくりだが、2個目以降は迅速におきる。2個目以降の結合にはCdc34のacidic loopが重要。といったところだと思うので すが、いかがでしょうか?あってますか?

来週からは新M1のPNASが始まります。トップバッターは和田君ですが、これまでの速報を聞いて「よい発表の仕方」というものがわかりましたか?よい発表ができるようにがんばってください。

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