2006年 5月15日

先週の講評で寺島氏から「講評」の定義が提供されたが、私も常々疑問に思ってきた。まず、何に対して「講評」すればよいのか。我々学生は指導教官ではないので、演者の発表の仕方についてとやかく言うのはおかしいし、HPでの伊藤氏のコメント欄と役割がかぶってしまうだろう。では発表された論文の内容について講評を行うという事はどうだろうか。しかしこの会は速報会ということもあり、我々は紹介された論文を直接読んでいるわけではない。つまり、紹介された論文についての講評を行う事は極めて困難であると私は考える。そこで今回は真に勝手ながら、紹介論文に対する「私的な感想」を述べるにとどめようと思う。

Nature 伊藤氏
『コレラ菌のキチン分解酵素』 GbpAが甲殻類の表面におけるコロナイゼーションに重要であるということらしいが、このタンパク質がマウス内での繁殖にも関係している(と言っていたと思う)という。この後者はどのようなメカニズムによるものなのだろうか。確かにsurvivalとinfectionのリンクなのだろうけれど、こういう例は無数にあるだろうし、GbpAという一タンパク質の重要性は良く理解できなかった。
『Wntによるβカテニンの活性化』 「ネガティブ×ネガティブ=ポジティブ」という形での制御を示すモデルが提唱されている。分解の抑制による遺伝子発現の活性化という形は面白いと思う。分子生物学的にはまだcontroversialな点(レセプターの性格についてだと思う)があるようなことを伊藤氏は言っていたが、私としては分解酵素達の発現がどう制御されているのかということも気になった。
『複製フォークでの話』 LeadingとLagging Strandでの複製速度の違いはどう解決しているのかということで、基本的にLeadingの方が待っていた、という結論だったと思う。まあ、待たなきゃ仕方が無いだろう、というのが率直な感想だが、実験的に止まっているのを観察しているということでNatureなのだろう。

Science 寺島氏
『染色体間の相互作用による遺伝子発現制御』に関する2報。 まず、Methylaseを介して二つの染色体上にある別々のlociが直接(ある意味間接的だが)相互作用する可能性を示した報告について。二つの染色体が特定のlociで相互作用するとして、それが生理的、遺伝学的にどのような効果を生み出すのか、ということについては言及されなかった。複数の染色体に散らばった遺伝子群の発現を一斉に促したりするのに必要な生理現象...とかそういうことなのかなとか想像してみる。
もう一つは、X染色体のinactivationとXX間の相互作用の関係についての報告。X染色体同士が近づいていってからまた離れたというのをFISHで観察しているが、どうやって近づいて行ってそこで何が起こっているの か、というような情報はまだ無い様だ。上の報告ともあわせてもっと具体的なメカニズムの解明に期待したい。
『染色体の分配に際して』 対染色体間でどっちの複製を渡すかという事を示し合わせていて、しかも細胞の種類によってそのパターンが違うらしい。やっぱり染色体間での相互作用が関係しているのだろうか。

PNAS 和田氏
Bacillusのスポアvsテトラヒメナ』 スポア形成については大学で散々教わって知っていたが、あの外側のコートがどんな構造をしているのかとかは今まで気にも留めたことは無かった。今回の報告はそういった好奇心を煽ってくれた。良く知らないが、もう構造は解かれていたりするのだろうか。外からの攻撃に強くても内側からは簡単に解けるのだろうから、やっぱりそれなりにpolarity(向きって言う意味ね)のあるポリマー構造なのかな。

EMBO 入枝氏
『Twinfilin』 個人的にactinとかに興味が無くて勉強不足なので、話についていくのがやっとだった。メインポイントは、このTWFが機能的にも構造的にもactinのB端に付くキャップだということがわかりましたよ、ということらしい。コメットテイルの話とかも挙がっていたけれど、TWFを発現する細胞の生理における重要性などはこの論文では示唆されていたのだろうか???よく分からなかった。
『lactose/proton symporter』 構造解析から、プロトンが中に付かないとラクトースも入らないということはわかった。けどsymporterとかの話を聞いた時の何時もの基本的な疑問が沸き起こる。それは、チャネルに入った基質(ラクトース)って本当に濃度勾配依存的に通り抜けるのだろうか、ということ。このチャ ネルがただの穴なら話は別だけど、このsymporterは構造変化に伴い外に開いたり中に開いたりするわけで、さらにラクトースはその開いた cavityにはまっている(?)のだろうと私は想像する。ラクトースにとっては外に開いていようが内に開いていようが行く先はその時その先に広がっている空間であって、自分 (ラクトース)にとってはその前の空間と自分の後ろで閉じているチャンネルのその更に奥の空間との間の自分の濃度差なんて関係ないように思える。もしこのsymporterがこの論文のFig5のCの構造とDの構造を五分五分の確率で行ったり来たりしているのだとしたら、それこそ濃度依存的な基質の流入は起こらないのではないだろうかと思ってしまう。私は何か錯覚をしているのだろうか。誰か説明して欲しい。

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