2009年 6月8日

催促されるまですっかり感想に当たっていることを忘れていました、檜作です。速報の感想も今回が最後になるかと思います。速報の感想制度が始まってからはや5年、立ち上げから見てきた身としては感慨深いです。そういえば当初は講評と呼ばれていましたね。それではどうぞ。

須藤さん:Nature 7230, 7232, 7233
Fas-FADD death domain complexの立体構造が解けましたという話。dimer of dimerのhetero-tetramerを構成するようですが、Fasが単体時と複合体時で構造が大きく異なり、複合体形成時に長いヘリックスが大きく突き出すような構造変換がモデルとして提唱されています。この論文ではヘリックス中のIle313の点変異のデータから構造変換と機能に関連があることをサポートしていますが、さて、われらがStMotBcでも同じような構造変換が捉えられれば、と期待がかかるところです。そういえばopen-typeのFasの構造が何かに似てるなーとは思っていたんですが、FliGのMドメインとリンカー領域でした。よくあるフォールディングなのかもしれませんが、もしや!?
アメリカではNIH Grantの状況が悲惨な事になっているようで、プロジェクトに失敗すればあっさりラボがとり潰されることもあるとか。"My career in research seems to be over."なんてセリフ、シャレになってません。でも対岸の火事といって笑ってもいられないでしょうね。

小川くん:Science 5914, 5915
時々発作的にやりたくなる化石の話。自分もよく罹ります。アノマロカリスの仲間?の化石が、今まで見つかっていたカンブリア紀のものから1億年ほど新しいデボン期の地層から発見されたという。特徴的な触覚はそのままに、一対の翅と尾棘のようなものが追加されています。1億年の内に獲得したんでしょうか。何の役割を持っていたかは分かりませんが。
赤血球に感染したマラリア原虫を血小板が殺すという話。感染した赤血球を認識して血小板が赤血球に接着し、中にいるマラリアを殺してしまうという。核を持たず新規にタンパク質合成のできない血小板が、感染した赤血球の認識、接着や殺虫成分の注入?などに必要な因子をどこから調達しているのか、不思議ではあります。

瀧口(陽)さん:Cell 137(2), (3)
HIV-1が感染する際に、ホストの細胞質膜に結合した状態でRNAを注入するのか、それともエンドソーム内に取り込まれた後にRNAを注入するのか、を区別しようという試み。2種類の蛍光タグを用いてどのタイミングでlipid mixingが起きるのかを見分けるというなかなかうまいやり方で見分けています。この結果によればエンドソーム内で注入しているらしい。この例に限らず2つのモデルの対立というのはどの分野でも見られるものです。ダイニンのステップしかり、ゴルジ体の輸送しかり。かくいうべん毛分野でもアレやコレやと論争はたびたび起こりましたが、論争あるところに進展あり。対立意見が刺激を生み、研究が活性化し、結果的に理解が深まるというのなら、歓迎すべきことだと私は思います。

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