今回は4人でしたので感想も長いです(ウソ)。

北島さん
Science No. 5951, p. 422

窒素固定量の辻褄を合わせるためには他に何か機構があるはず。 ということで海底の土壌中から新規の微生物、古細菌と真性細菌との共生体を発見して、FISHで見て、NanoSIMSで窒素の取り込み(?)を観察しています。 紹介記事のタイトルがFantastic fixersとあるので凄いやつらしいです。 そういえば、地球温暖化との絡みで炭酸ガスの削減が喧伝されて、CMで盛んに緑化が謳われています。が、植物がエライのは酸素を出すからで、あまりCO2の吸収には寄与しておらず、実は海洋が炭酸ガス吸収の主役ではないかノという話がありました。 結局、海は偉大ということなのでしょうか。
とにかく皆さん、流行性感冒には気をつけて。

誠司さん
Science No. 5925, p. 384

好中球の走化性には、DOCK2の活性化によるアクチン再編成が必要で、そのためにPA (phosphatidic acid) が働いていることを発見したという仕事です。 驚くべきはその手法。
PAやその他のリン脂質を培養液に混ぜることで細胞膜に入れて、DOCK2の局在、アクチン線維の重合分布の変化を見ています。 蛍光標識したPAを外液に混ぜると、自然に細胞膜がその蛍光で染まることが、2001年のScienceで発表されており、著者はそれをそのまま利用しています(Supplement Figure 7 で実際に見ています)。 しかし脂質二重膜内にきちんと取り込まれているかは不明で、更に問題なのは、PAが取り込まれるのだからその他のリン脂質もそうであろうと仮定しての実験です、全てノ もしかしたらPAだけが効くのではなく、PAだけが膜に着いて何か影響を与えているのを見ているのかもノ クワバラクワバラ
Science No. 5918, p. 1226
色彩の心理に与える効果に就いて。 これどれだけ人種の違いや民族の違いとかを考慮しているのかしら? この様な論文を見る度常々思うのですが、どれだけコントロールされた実験をしているのでしょうか。ちょっと心配です。
とにかく、構造生物学は大変だなあ。

大野さん
PNAS Vol. 106, No. 45, p. 18960
なんだか当たりの号が揃ったようで、面白い話が沢山聞けました。 細菌由来の蛋白質が大本のLACTBが線維形成してミトコンドリアの内膜構造の維持に関与しているらしい(あくまで電顕観察結果だけなので、まだまだ何とも言えませんが)ことを発見した仕事が、個人的には一番面白かったです。 将来、欠損させたときのミトコンドリア内膜の詳細な構造や安定性を調べた実験や、LACTB線維の1分子計測の実験が出てくるように思います。
あと、アクチニンがチャネルの膜局在を助けていることを見つけた仕事 (p. 18402)、アクチン線維の核上部に作るネットワーク(actin cap と言う名前だけは何とかならんかなあ、非常に紛らわしい)を見つけた仕事 (p. 19017) は、印象的でした。 きちんとした仕事をすれば、よく知られている蛋白質、身近な蛋白質でも、まだまだいろんな新しいことが見つかってくるのかもしれません。
とにかく時間は皆さんちゃんと守りましょう。(そこのあなた!あなたもですよ!)

陽子
EMBO Journal Vol. 28, No. 18, p. 2697

核膜孔輸送に関する話。BSAでも、単に周囲を疎水性アミノ酸残基を模した分子で修飾するだけで通過可能になることを示した実験。 単純な実験ですが(EMBOにしては珍しく)面白かったです。
またFoF1-ATPaseのFo部分の回転ステップを調べた仕事の話 (p. 2689)。 今年の初夏にあった日本膜学会で、吉田賢右さんがされた特別講演と(手法、結果はともかくも、図のデザイン・説明の例示(36度はOKで、108度は駄目な理由の説明)まで)、私の記憶が確かならば(←最近とても不安)ほとんど同じでした! 今回は36度で多分c subunitは10個と言うことですが、種によって13個ぐらいのものまであるそうです。(論文は出てないのかな)

とにかく核酸を研究している人たちにとっては一流の雑誌なので、食らい付いていきましょう!



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