2007年 10月1日


伊藤さん:Nature 2007 vol. 447 no. 7148, vol. 449 no.7160

新しい光学技術の開発か!?KNbO3という物質でこしらえたワイヤーを光ピンセットでつまんで、その中にレーザー光を通してやると、光の振動数が2倍に増える!という技術を開発したお話。レーザー光の振動を増幅すると蛍光強度が上がるので、ワイヤー内を透過した光のみが蛍光を強く励起することになるらしい。 これによって視野内の蛍光分子群の中で一分子のみを標的にして観察することも可能になったという、なかなか今後の応用に期待できそうなお話でした。 それにしてもこんなKNbO3なんて物質、どこから見つけてくるんでしょうね。

北島さん:PNAS 2007 vol. 104 (26), (27)

「ひとつぶ30マイクロ。おいしくてつよくなる!」 注射ではなく、お米でワクチン投与しようという試みのお話。今回の論文で紹介されたのはコレラ毒素、CTBタンパク質(むろん無毒化されている)を発現するトランスジェニック米。 なんでも米ひとつぶに30マイクログラムのCTBが含まれているそうで、これを食べれば体内にCTB抗体が作られる!というわけで、発展途上国の食糧問題と医療問題を一挙に解決できるすばらしいお米のお話なのですが、なんせ遺伝子組み換え食品なんで、いくら発症しないからとはいえ実用化には前途多難かと思われます。 というか作ろう思えば毒素を発現するお米だって作れちゃうという現実にいささか戦慄を覚えるのでありました。 余談ですが、もしこのお米が商品化するのならば宣伝文句は上記のあんな感じがよいと思います。

小池さん:EMBO vol. 26 no. 15, no. 16

電顕で見るファージのDNAイジェクションの劇的ビフォア・アフター。ファージが自分のDNAを宿主に打ち込む前後の構造を再構成によって調べた結果、ファージが持つ尾部の先端にシグナルが伝わると、その先端からドミノ倒しのように構造変化していくことで、DNAを排出できるようになるそうです。しかしこの話、イジェクションのビフォア・アフターしか見ていないため、イジェクションの途中経過はあくまで推測でしかないのがもどかしいところです。結局尾部内に詰まっていたgp18はどこにどうやって消え失せたのか分からないし……。構造だけから話をするのも難しいというお話。


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