2010年 10月18日

須藤さん Nature #7314, 7315, 7316, 7317
難波研の藤井さんによる、アクチンフィラメントをクライオ電顕で観察し6.6Aの解像度で構造を示した仕事から、地震が起こる際に地層の中に引っ張り込まれた水の部分が関わり、またもっと深層ではマントルの溶解が水と同じような働きをしているというお話まで、盛りだくさんでした。その中でも、#7314(p440)の、目の反応(化学反応の中で最も速い)を5フェムト秒で捉えた、という論文が印象に残りました。この非常に速い反応は理論的には予測されていたのですが、装置の精度が追いつかず実験で確かめることができていませんでした。今回、光学系の装置およびカメラの改良により、conical intersectionと呼ばれる地点までにかかる反応時間を追うことが出来たとのことでした。

野々山さん Science #5999, 6001
#5999(p1653)光依存的に胞子形成する菌類で最初に見つかり、シアノバクテリアにも存在が確認されていた、紫外線を吸収するMycosporine serinolやShinorineといった化合物がどのように合成されるのか、その合成酵素をシアノバクテリアで同定した話がありました。これらは化粧品としても使われているそうです。
#6001(p222)では、現在行われているCOP10にちなんで、トウモロコシの害虫となるガの幼虫を殺すBacillus由来の蛋白質を発現するように遺伝子操作したトウモロコシを、無操作のトウモロコシと一緒に畑に植えることで、経済的にも殺菌作用的にも有効に使えることが分かったという話がありました。

陽子さん PNAS vol. 106, #49, 50, 51
いくつも面白い話がありましたが、その中でも#50(p21121)のゴルジ体の蛋白質FAPP2を平面膜(というか油滴)の上に乗せると4分程度の時間でチューブを形成したという話が印象的でした。X線小角散乱と超遠心分析で、FAPP2がダイマーを形成し、F-BARのように三日月上の細長い形態をしめすことから、何となくつじつまは合いますが、チューブというにはかなり太かったりと突っ込みどころは満載なのだそうです。もう一つ、#50(p21149)の1つのアミノ酸の違いだけで、ヘリックス中心の構造からシート中心の構造に変化することが示された話は大変興味深かったです。

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