2012年11月5日

岸さん (Nature #7410, 7411)
1, 3
細菌に対する免疫の話x2。NLRP6を欠損すると免疫系が向上したり、HVEMを欠損すると低下したりするのをマウスを使って示していた。相変わらず役者が多すぎて、現象を『観察』しているだけで『解明』には至っていないようだ。とりあえずアンタゴニストやアゴニストを使って、医療の方へと応用が利く、といういつもの流れのよう。
2
心肥大の話。Gタンパク質共役受容体の一つAPJを欠損させると、心肥大が減少したり、APJへのリガンドであるapelinによって増加したりするのを観察していた。今後は、APJ下流の具体的なターゲットを調べていくとかだろうか?

平子さん (Science #6085, 6087, 6088)
1164
アクチン重合の、forminによる重合の方の話。formin様タンパク質であるmDiaとそれと結合するAPCについて、リコンビナントフラグメントをvitroで混ぜて、TIRFで観察した。nucleationの時はmDiaとAPCは複合体を形成しているが、伸長し始めると、APCはその場にとどまり、mDiaが重合の先端として離れていく、というのを見ていた。あまり進んでいなかったforminの方もどんどん解明されて行くのだろう。
1440
p53は様々なストレスに対して、様々な発現量のダイナミクスを示すらしく、本論文ではストレスのinputとは異なるダイナミクスをmimicさせる方法をわざわざ計算シミュレーションで決定し、実際にoutputの応答がp53の発現のダイナミクスに依存している事を示していた。
1534
ウイルス感染の話。ウイルスをフェレットにP10世代感染させることで、非接触感染する様になったという話。単純にmutationが蓄積するだけで非接触感染能を獲得してしまうらしい。事故でも起きたらすぐさま拡散しそうで恐ろしい。
1549
テロメラーゼの発現量を調節する新たな因子としてB-catenin/Klf4が見つかったという話。Klf4が山中因子であるのが良かったのだろう。ともかくこうした多様の因子が関与しているという事は、細胞ごとに厳密にテロメラーゼの量が制御されているという事を示唆しているようだ。

小林さん (PNAS #43, 44)
18198
植物においてmicroRNAの生合成に関与している新たな因子として、SICが見つかったという話。植物においては、miRNAの合成が低温や塩のストレス耐性に重要らしい。どのように関与しているのか、どうして重要なのか、はよく分からないようだ。
18180
Thermoanaerobacter tengcongensisという菌の機械受容チャネルMscSの構造を解いた話。大腸菌で既に解けているものと比較したりキメラを作ったりして、細胞質側下部のBバレルのポアの半径や静電ポテンシャルがイオン透過を決定しているというのを明らかにした。ただし、この菌のMscSの生化学的な解析が十分足りているかどうかは疑問。
17621
同種の菌同士の争いの話。ファージを持つ株とファージに耐性がない株とのcompetitionを、培地中とマウス中の両方で見ていた。実際の生体内ではきっともっと壮絶なバトルが繰り広げられているに違いない。

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