2012年12月17日

小林さん Nature
#7416 391
酸感受性イオンチャネル(ASIC)の話。ASICは痛覚から味覚までさまざまな生理過程に関与しているとのこと。ASIC1aはpH7.25のときには非選択的にカチオンを通すのに対して、pH5.5のときにはNa+を選択的に透過するということがそれぞれのpHでの結晶構造とともに示されていた。が、グラフを見るとpH5.5のときはLi+も透過しているように見えたけどどうなんでしょう。

#7416 456
ブタのハプトグロビン-ヘモグロビン複合体の結晶構造を解いたという論文。ハプトグロビンは血中の遊離ヘモグロビンに結合して尿中への喪失を防ぐ生理的な意義があるようで、この論文ではハプトグロビンがヘモグロビン サブユニットの二量体と不可逆的に結合して、さらにこれがヘプトグロビンのCCP domainによって二量体を形成しているとのこと。ヘモグロビンがハプトグロビンに不可逆的に結合してしまうとヘモグロビンが再利用できないような気がするが、それには何か他の因子が関わっているのか、それとも再利用はされないのか気になるところ。

#7423 218
海底の無酸素層に生息するDesulfobaceae属の糸状性細菌が、数センチのフィラメントを上に伸ばしてその方向に電子を輸送して酸素を消費する、という論文だった。数センチのフィラメントを生やすぐらいなら酸素のある層で生育したらいいんじゃないの?と思ったが、そういう他の菌が住みにくいニッチな環境を選ぶことによって、海底のある程度深い層の栄養を独占して得られるのだろうか。

#7423 254
直腸の腫瘍形成に関する論文。IL(インターロイキン)-23が腫瘍の形成やその下流のサイトカインの発現にも重要であることや、微生物産物が腺腫に侵入することでIL-23シグナル経路を活性化して腫瘍形成が促進されたことが示されていた。

郷原さん Science
#6013 108
Wnt5aと呼ばれる非標準的なWntリガンドが腸の上皮細胞の傷の修復に関わっている、ということを示した論文だったと思う。RT-PCRによって傷ついた細胞ではWnt5aの発現量が上昇することや、Wnt5aノックアウトマウスの切片ではWTのもので観察された陰窩(crypt)の再生が見られなかったことが分かったようだ。

#6014 264
クオラムセンシングについての話。カゼインをを含む最小培地で緑膿菌P. aeruginosaが生育するにはLasR(ホモセリンラクトンと結合する転写因子) によって発現が誘導される細胞外プロテアーゼが必要である。このような環境で緑膿菌を生育させると、自身ではプロテアーゼを合成せずに他の個体が産生したプロテアーゼを利用するプロテアーゼネガティブな菌(social cheater)が出現するという論文だった。パレートの法則や働きアリの法則のように、細菌のコミュニティも怠け者がいても成立するのだな、と思った。

#6015 384
海綿のポリセオナミドと呼ばれる毒素の話。ポリセオナミドは48aaからなるペプチドであるが、18個のD-アミノ酸を含んでいるため非リボソーム的な経路で合成されていると考えられていた。しかしこの論文ではポリセオナミドがリボソームで合成されたあとにepimeraseと呼ばれるL-アミノ酸を異性化させる酵素によって修飾されることが示された。D-アミノ酸を用いることでL-アミノ酸だけではできないような構造が作れるのだろうか。

#6016 524
HIVウィルスについての話。immatureなHIVウイルスでは、宿主細胞への侵入に関わるエンベロープタンパク質が膜上に散在しているが、matureな状態ではクラスターを形成しているという論文だった。また、タンパク質の局在を観察する際に、蛍光物質を基底状態に戻すSTED beamを励起光の周りにドーナツ状に放射することによって、より小さな蛍光のスポットが得られるというSTED(STimulated Emission Depletion)顕微鏡を使って実験していた。これを使えばPlzD-GFPの不自然に大きい蛍光の局在もこれを使えば何か分かる...かもしれない。

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