2013年4月22日

郷原さん(Science Vol339 #6126, #6127, Vol340 #6128)

1. 分裂する細胞がくびり切られる際のESCRT IIIの働きは、細胞間の張力によって誘起される、という話。レーザーか何かで、周囲の細胞との接着部分を切ると、ESCRTの集合や機能が阻害される、という事を示していた。レーザーでのカットと細胞間張力をイコールとして良いのかは疑問だ。
2. インフルエンザに対する薬をデザインした、という話。そもそも本ウイルスは宿主細胞の表面に存在するシアル酸を認識して侵入するらしいが、今回、シアル酸が結合した中間状態の構造から、シアル酸と競合的に結合しそうな新規シアル酸様物質をデザインし、実際に、それらがリレンザやタミフルと同等以上のインフルエンザ治療薬として使えそうだ、という事をマウスかなんかで示したらしい。今後は副作用などを臨床で調べていく事になるのでしょう。
3. セレノシステイン合成酵素SelAの立体構造の話。tRNAが結合した状態での構造を示していた。
4. 過塩素酸塩(ClO4-)を還元する古細菌およびその経路を同定した、という話。従来の過塩素酸塩還元菌とは経路が違うらしく、まだ地球大気に酸素が存在しない時代に、この菌は生まれたのでは?との事らしい。過塩素酸塩は火薬・爆薬の一種らしく、つまりロケットと同じ燃料を使う菌、という事らしい。
5. DNA折り紙の話。これまでより曲状にできる様に工夫したらしいが、その工夫のポイントはよく分からなかった。
7. 膜貫通型の翻訳後修飾酵素(Ste24p)の構造のお話。酵母由来のものとヒト由来のもの、それぞれを報告した2報が紹介された。認識ペプチド有りと無しのそれぞれの状態の構造を解いたとか。

西垣さん(PNAS Vol109 #40, #50)

1. 細菌内で基質タンパク質などが凝集するのを防ぐheat shockタンパク質(Hsp)の機能の話。D. radioduransはHsp17.7とHsp20.2を持っているらしく、それぞれは異なる機構によってunfoldのタンパク質をre-foldしているらしい。この機構はあらゆるバクテリアにおいて保存されているのだろうか? あと、タイトルには「two-component small heat shock protein system」とあるが、いわゆる「two-component system」とは無縁らしい。ややこしい。
2. バイオフィルムと細胞外マトリクスの関係についての話。細胞外マトリクスタンパク質Pslによって細胞のc-di-GMPレベルが上昇するという事らしく、この効果はin transに生じる事から、高密度な細胞外マトリクスが形成される事そのものがc-di-GMP濃度の上昇、さらにはバイオフィルム形成を引き起こしているというようなことを示していた。では細胞はどうやって細胞外マトリクス濃度を検知しているのだろうか?
3. 磁性細菌のべん毛を電顕で見た、という話。難波研の仕事である。7本のべん毛と、その隙間に存在する24本の繊維が一束になっているらしく、24本の繊維が、べん毛繊維間の摩擦を減らしているのでは?との事らしい。24本の繊維の方はどうやって分泌・形成されているのであろうか?
4. 大腸菌のchromosomeの物性を調べた、という話。専用のマイクロ流路みたいなものを作って、その中に染色体を押し込めて、exponential phaseとstationary phaseのそれぞれのchromosomeの硬さ、柔らかさ、圧力と密度の関係などを調べていた。こういう生物x工学みたいな実験をすると、世の中の評価が高くなるのだろうか?

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