2013年5月20日

竹川さん
Nature Vol.494 No.7437, Vol496 No.7443, Vol.497 No.7449

No.7437
1) Salmonella typhimuriumにおいて、野性型毒性表現型に加えて、野性型無毒性表現型が半数以上存在する事が感染に重要という話。hilE変異体は無毒性の割合が野性型より低いが、感染後遺伝的に無毒性のhilD変異体に変化しやすく、はじめに毒性表現型が多いにもかかわらず、感染能が低下するみたいです。ややこしい。
2) SAR11系統の細菌に感染するファージが見つかった話。この細菌は海水中の細菌のほぼ100%という割合を占めるほど繁栄しており、その理由の1つとして、大腸菌等より小さいためにファージが感染しないという仮説があったが、今回感染するファージが多数見つかったため、この仮説は否定された。このため、体積あたりの表面積が大きいため、代謝で有利という他の仮説が有力となった。

No.7443
3) 赤痢菌から新しい毒性因子IpaJが見つかった話。IpaJはゴルジ体を断片化してしまうようで、細胞のシグナル伝達で重要なN-ミリストイル修飾の除去に作用していることがわかった。

No.7449
4) バイオフィルム形成において、細胞外多糖Pslとコロニー形成の関係を調べた話。Psl産生の多い菌はその場に留まってコロニーを形成し、少ない菌は移動して別個体と混合のコロニーを形成しているらしい。資本主義の例えが出てきたが、よくわからなかった。金持ちは自力で財を増やしていき、貧しい人は集まって力を合わせてがんばっていくということでしょうか。

須藤さん
Science 6112, 6113, 6129, 6121

#6112
1) カルシウム依存性カルシウムチャネルOraiの結晶構造が解けた話。中心部の6つのα-ヘリックスがポアを形成し、グルタミン酸残基がCa2+と結合していた。
2) 光受容で重要なレチナールの前駆体を運ぶ細胞質タンパク質に変異を入れ、レチナールを共有結合した上で吸収極大を200nm以上の範囲の中で様々なものに変化させる事ができた話。

#6113
3) マウスで新しい匂い物質r-darcinを見つけた話。オスの尿にふくまれる不揮発性物質で、メスはその空間を2週間記憶できるらしい。強烈ですね。
4) モルフォゲンの反応拡散と指の本数の制御の話。マウスのモルフォゲンが先端で急激に薄くなると多指になり、魚のひれの骨格に似ている事から、パターン形成メカニズムが保存されている事がわかる。

#6129
5) 細菌由来の抗生物質pactamycinが化学合成できたという話。15ステップからなるが、各ステップの集率を90%以上にすることで、最終的に1%程度回収できた。そのままでは効果が強力すぎるため、類似構造体の作製で薬の実用化が見込まれるみたいです。
6) 細胞サイズまで小型化した無線オプトエレクトロニクス装置をマウスの脳に注射した話。コードレスのため、マウスの行動に制限がかからないのがメリット。

#6137
7) ヘテロ二量体とホモ三量体のコイルドコイルペプチドを組み合わせて直径100nmのケージを作ることに成功した話。フラーレンよりかなり大きいですが、いろいろ使い道がありそうですね。
8) セロトニン受容体の結晶構造を2つのグループが解いた話。

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