郷原さん Nature vol.497 No. 7448, 7451, vol.498 No.7454
# 268, 272
Lactobacillus brevis由来のABC輸送体ファミリーのECF輸送体の結晶構造を解いた、という話。
原核生物のECF輸送体はABC輸送体にはない溶質結合タンパク(EcfS)があり、基質と結合するが、その構造や輸送機能はよく分かっていなかった。268では葉酸のEcfS、272ではヒドロキシメチルピリミジンのEcfSを含むECF輸送体の結晶構造を解いた。トランスポーターは基質が結合したらそのまま縦方向に開いて基質が抜けるというイメージがあったので、EcfSが膜に水平に埋まっているのは不思議な感じがしました。
# 521
膜内在性ジアシルグリセロールキナーゼの結晶構造を解いた、という話。
このタンパクは膜タンパク質の酵素学やタンパク質の折りたたみ、組み立てや安定性の研究のモデルとしてよく使われているようで、NMRでのモデルはされていた。今回解けた結晶では以前のNMRの結果と同じ三量体だったが、活性部位の構造が異なるらしい。溶液中に解けているものより今回の結晶構造の方が実態を反映しているのでしょうか?
# 643
レトロウイルス(HIV-1)の殻を構成するタンパク質をクライオ電顕と分子動力学シュミレーションで見た、という話。
このタンパクは中心に6量体があり、それを取り囲むように6量体が6個、もしくは5個集まった構造が1つの要素になっているそうです。5個集まった五角形の構造は、殻の曲線部分にくるということで、関係ないですが五角形の構造がたくさん出来る変異体ではサッカーボールみたいにウイルスが丸くなったりするのかな、と思いました。
# 647
亜硝酸塩輸送タンパク質NarKの結晶構造を解いた、という話。
亜硝酸を輸送するタンパク質はこれまでわかっていなかったが、今回結晶構造が解かれたタンパク質は輸送経路が正に帯電しており、他のイオンと共役するのではなく、単体で輸送されるのではないかということが示唆された。正電荷の部分が広くて、輸送するのを妨げたりはしないのかな、と感じました。
# 363
ヒトの体の表面についている真菌の種類と分布を調べた話。
# 390
無秩序にアロステリック修飾を行うE1Aの結合をFRETで調べた話。
TAZ2やpRbはE1Aと結合することがわかっており、その結合強度は結合部位によって決まることがわかった。
西垣さん Science vol. 339 no. 6123, vol.340 no. 6135
# 1084
自己免疫疾患と環境要因の関係について。
菌の非存在下で自己免疫疾患により起こる1型糖尿病が減少することがわかった。また菌非存在下ではテストステロンの分泌はオスメスでほとんど差が無くなった。そこでオスの腸の細菌叢をメスに移植するとテストステロンの分泌が増加し、糖尿病の割合が減少した。菌によってホルモンの分泌量が変わることと、男性ホルモンによって自己免疫疾患の割合が減るのが不思議でした。自己免疫疾患が原因で起こる病気はたくさんあるので、詳しいことがわかるといいなと思います。
# 1080
凝集したタンパク質をリフォールディングする機構について。
DnaKとClpBの相互作用をNMRで見て、それによりClpBがDnaKのリフォールディング機構にどのように関わるか議論しているらしい。
# 978
真核生物のフォールディングに失敗したタンパク質を除去する機構について。
真核生物ではフォールディングに失敗して、リフォールディングされないタンパク質はマンノシル化され、それが分解の目印になる。この論文でGFPを使って、マンノシル化に関わるPmt1, Pmt2の機能を調べた。GFPを使うことでタンパクの分解が起こっていないことが可視化できたのがポイントなのでしょうか?
# 972
チャバネゴキブリの味覚について。
小野君 PNAS vol. 110 no. 24, no. 25
# 9734
糖脂質酵素グリコリポザイムについて
膜タンパク質はSec依存、非依存に関わらずタンパク質自身が翻訳されて膜に埋まることは出来ない。これを助ける因子が糖脂質であることがわかり、その働きからグリコリポザイムと名付けられた。今回はこのグリコリポザイムが細胞膜での膜タンパク質の反転に関わっていることがわかった。
# 10201
Ras標的の抗がん剤開発について
Rasは細胞増殖に関わる膜タンパク質であり、この遺伝子の変異はがんの原因の約20パーセントを占め、Rasを標的とした抗がん剤は抗がん剤として有効である。しかしRasの結晶構造からは薬剤が入り込んで機能を阻害できるような溝は見つかっていなかった。そこで動的シュミレーションによりRasのモデルを作ると、薬剤が入り込めそうな溝があることが分かった。また、抗がん剤としてよく使われているアンドログラファイドはこの溝に入り込んでGEP活性を阻害しているらしいことがわかった。これをもとに、Ras標的抗がん剤を設計した。分子の形を微妙に変えることで、特定の細胞のRasだけに効果のある抗がん剤も出来るのでしょうか?そうなればがん治療ももっと進むと思いました。
# 10300
REM睡眠時の脳について
REM睡眠は、体は寝ているが脳は活発に動いていて、このときに脳は情報の整理や夢を見るといわれている。この時の脳の活動を観察するため、fMRIにより脳に流れる血液の量を調べ、どこが活発に活動するかを調べた。その結果、帯状回と視床が交互に活性化するというREM睡眠特異的なリズムが示された。体と脳を休めるだけならノンレム睡眠だけでも良い気がしますが、レム睡眠も大切なのでしょうか。脳と睡眠には深い関係がありそうです。