2013年10月7日

米田 Nature #7458, 7468
1)腸チフス菌の毒素タンパク質の機能と構造を見た話。ターゲットのタンパク質をLC-MS/MSで同定して、結合にはターゲットの糖鎖が重要だということを示していた。構造はおまけで、機能解析の方に重点を置いているという印象を得た。
2)リボスイッチの話。これまで考えられてきた2状態ではなく3状態によって制御されているということを示していた。化学的解析やNMR,シミュレーションと幅広い実験をしているのはすごいと思った。
3)エルシニアのABC毒素の話。BとCのN末端領域の共結晶を解いて、変異体解析したといういつもの流れ。
4)H/Naアンチポーターの構造を解いた話。これまでよく解析されてきた大腸菌由来のものではなく高度好熱菌T.thermophilus由来のものを使うことで、低pH以外での構造=Outward facing構造が解かれ、さらにシミュレーションで、イオンの流入出と共役して、20度の構造変化をしているというモデルを立てていた。固定子も、これ以上に構造変化しているのかもしれませんね。

郷原 Science #6141, 6143, 6153
1)Cellular Thermal Shift Assay(CETSA)という方法を用いて、薬剤のタンパク質への結合を組織ごとに検出できるという方法の紹介。マウスを使用。応用すれば新規薬剤のスクリーニング等にも使えるのでしょうか?
2)Acanthamoebaに感染する2.5Mbものゲノムを持つ新規ウイルスを発見したという話。光学顕微鏡で見えるウイルスとは、驚きである。
3)ヒトの腸に生息する菌の種類によって薬剤の効きが変わるという話。原因は、ある種の菌が薬剤を不活化しうるためだとか。栄養条件によって、菌の活性が異なるようなので、食事と薬のバランスをうまく考える必要があるということでしょうか?
5)森を孤立させると、森の面積が小さい程、小動物が絶滅しやすいという話。単純に緑を残せばいいというわけではないということですね。

小嶋 PNAS Vol.110 #7, #26, #38
1)ATPを使って、ビタミンなどの基質を細胞内へと取り込む働きを担うECF(エナジーカップリングファクター)の結晶構造を解いた、という話。まず、ストイキオメトリーを調べるところからの仕事。構造と変異体の解析からモデル、といういつもの流れ。バンドがPomAに似ていることが少し話題となった。
2)コレラがT6SSで互いにエフェクターを撃ち合ったとき、姉妹同士が殺し合わないために必要な免疫分子を同定した話。トランスポゾン変異導入で大量の変異体を作成し、生えない菌を、全シークエンスで「減った配列」を見つけることで探してくるという手法。力技だが、賢い力技だと部屋が沸き上がった。
4)SlmAという、バクテリアでDNAやFtsZに結合するタンパク質と、短鎖DNAとの共結晶を解いた話。SlmAに結合したFtsZは伸長しても互いに衝突してバンドル化ができないため、染色体がZリングに巻き込まれることが無い、というモデルを示していた。
5)フクシマの話。2011年カリフォルニアにて放射性セシウムを含むマグロが捕れたらしいが、自然放射能よりもかなり下の放射性物質しか含まれていないことを示していた。
7)Tat complexの集合の話。機能的に集合解離するためには極少量比で存在しているTatE(TatAのホモログ)が必要だということを示していた。基質の変異体を使ったり、CCCPの影響を見たりと、やってることはなじみがある実験手法だった。

BACK