2013年10月21日

大羽さん Science #6142
1) 膜貫通型のCa2+とH+の交換輸送体の構造解析を行った。既に知られているCa2+とNa+の交換輸送構造と比較から、Ca2+/H+の結合構造が予測された。その予想残基の変異株により、Ca2+/H+の結合に関与する構造が明らかになったが、Ca2+が結合した状態の構造は観察されていない。
2) ヒトH7/N9型インフルエンザの感染能力をフェレットと豚を用いて2009年に大流行したヒトH1/N1型と比較した。その結果、H1/N1型ではフェレット、豚共に発症した。H7/N9型はH1/N1型に比べ感染能力は低く、フェレットに直接感染させた場合のみ発症し、豚では発症しなかった。

Science #6154
3) 真菌はエフェクターとしてsmall RNAを使用し、宿主植物のRNA干渉機構のメカニズムに影響を与えて免疫力を抑制している。
4) Na+が結合した状態でNa+, K+ ATPaseの結晶構造が明らかになった。Na+, K+ ATPase はαβγの3つのサブユニットから構成されており、K+が結合した結晶構造と比較すると細胞内のαサブユニットは大きく構造が異なっているが、細胞膜外のβγサブユニットは変化しなかった。今回はαサブユニットのTM(Transmembrane)ドメインにNa+が結合すると推定される場所が3カ所明らかになった。

平子先生 Nature #7455
1) ヒトを選んで吸血する蚊は相手をどのように選択しているのか?フェレットのような他の哺乳類と比較しても、ヒトを特異的に選択するため、二酸化炭素濃度や熱とは考え辛い。そこで、嗅覚に関与するOcro遺伝子を欠損させると、蚊の選択特異性に影響を与え、ヒト以外も吸血対象とした。また、Ocro遺伝子に欠損があると、防虫剤を添加した状態でも対象に近づく事から、蚊の選択特異性にはOcro遺伝子が関与している。
2) C型ウイルス肝炎由来のp7チャネルは、Na+, K+ よりもCa2+を好んで輸送する。6量体を形成している事は明らかであったが、どのようにカチオンを輸送しているか明らかになっていない。そこで、NMR構造解析を行った結果、構造的に対象位置にある3つ隣のモノマー通しが相互作用したユニークな構造が観察された。チャネルのopen状態とclose状態の変化に重要であろう場所は推定されたが、確証的なデータは得られていない。

Nature #7456
3) 70万年前の馬の骨のゲノムシークエンスから、馬の進化を再検討した。この調査から、DNAの保存期間は、DNAの長さと保管温度に依存する可能性が示唆された。DNAの長さが短く、保管温度が低い程長期に保存できる。
4) 肥満になると腸内細菌の代謝産物に変化が生じ、DCA(デオキシコール酸)が生産される。DCAが肝臓に移動して DNA損傷を誘発して細胞老化関連分泌表現現象(SASP)を促進し、最終的には肺がんの発症を促進する。抗生物質を添加する事により腸内細菌を殺した場合、DCAを生産できないためガンにはならなくなった。しかし、DCAのみ添加してもガンにはならないので、肥満になると誘発される他のファクターが必要であるが、そのファクターは明らかになっていない。

小野さん PNAS vol.110 #36
1) バクテリアを食べるキイロタマホコリカビは、Pseudomonas fluorescence (Pf)と共生関係にある。キイロタマホコリカビは2種類のバクテリア(PfA,PfB)と共生しており、等量ずつ保存している。PfBは飢餓状態の時に食用として利用できるために保存している事が知られているが、PfAは食用としては利用しないが、なぜ保存しているのか明らかではなかった。今回、PfAとPfBの二次代謝産物を比較した所、PfB菌体のGacA蛋白質の配列に変異があり、ヘリックス・ターン・ヘリックスDNA結合モチーフ部分がないことが明らかになった。この結果、PfBは共生として必要な二次代謝産物を生産しない事がわかった。
2) 温度と粘度がべん毛や鞭毛の駆動に影響がある事をモデルにした。今回示したモデルは今までの実測値と近い相関を示していた。

PNAS vol.110 #40
3) 新規の抗生物質を発見した時、従来の抗生物質とどこに作用しているのかを素早く検出する必要がある。そこで、従来の抗生物質を添加したバクテリアをDAPIで染色して、細胞の大きさ等を3次元プロット化した。新規の抗生物質をプロット化した時、従来のどの抗生物質と近いかを比較して効能を速やかに明らかにできる方法を開発した。

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