2013年12月9日

Nature 堀田
#7476
1) ADEP4という化合物を併用することで、抗生物質に耐性を持ったバクテリアを死滅させることができたという話。ADEP4はバクテリア内に存在するClpP(ミスフォールディング蛋白質を分解するプロテアーゼ)を恒常的に活性化する。黄色ブドウ球菌の生存に必要な様々な蛋白質を分解することで殺すことができるようだ。この菌が慢性感染したマウスでも同じように働くことから、実用化にも繋がる兆しが出てきた。
2) HIV-1ウィルスがどのように自然免疫を回避するのかを解明したという話。HIV-1が行うRNAの逆転写時に自然免疫が発動するはずなのだが、今回の研究結果から、HIV-1は宿主の因子(CPSF6やシクロスポリン)で自身が行う逆転写を覆い隠すことで、免疫から逃れることができるようになったと議論している。また免疫反応が起こるシクロスポリンと似た物質を用いることで、抗ウィルス剤として働くことを示すことができた。

#7478
3) カチオンチャネルであるTRPV1の構造を、クライオを用いて高分解能で解くことができたという話。クライオでの分解能はだいたい10Å程度であるようだが、今回3.4Åという分解能で解くことができた。電顕で原子レベルまで見えるようになったのは衝撃的である。

Science 小嶋
#6122
1) 中国では人口過多を防ぐために1979年に一人っ子政策を始めた。今回1979前後に生まれた10万人を対象として行った調査により、一人っ子の人の方がリスクや競争から避ける傾向があるという結果が得られた。
2,3) 2004年から南アフリカにおいて抗HIV薬が普及し始め、その成果が現れたようである。HIVに感染した人の平均寿命が2003年では30代が多かったのに対し、2011年では60代、70代まで生きている人の割合が増加してきたようだ。他国からの支援で教育以外にも貢献できるということが示された。
4) 病原菌は宿主細胞に感染してからも増殖を繰り返し、感染を拡大させようとする。これに対し感染した宿主細胞は、アポトーシスを行うことで感染拡大を防いでいる。その中でも機能未知であったCasp11が、細胞質に出てきた病原菌(サルモネラ)に反応して働くということが分かった。

#6131
5) これまで脳の中にあるホルモンの発現量は一定だと考えられていた。今回マウスで長日、短日環境に晒すことにより、ホルモンの存在バランスに変化が現れることが分かった。短日環境にいた方が鬱になりづらいようである。人に当てはめるのは難しいが、これはマウスが夜行性であることが関係しているかもしれない。
6) スタンフォードにある世界最高クラスのX線自由電子レーザー施設であるLCLS(線形加速器コヒーレント光源)を利用して、光化学系IIの活性状態での結晶構造とMn4CaO5クラスターの電子状態を同時に解析することができたという話。このLCLSは1000兆分の1秒というとても短いパルスで強い光を当てることできるみたいで、これが解析の上で鍵となったようである。

#6162
7) バクテリアに抗生物質を投与しても遺伝子変異により生き延びて増殖することは良く知られるが、これが遺伝子変異以外の原因で起こることもある。今回Cmを使うことで、タンパク合成阻害をしても同様のことが観察された。なぜこのようなことが起こるのかというと、ギリギリ生き延びることができた菌でCatが働き始める閾値に達する菌がごく稀にいて、そのような菌が生き残ることができるのを数理学的アプローチで示した。ただしこれが実際にバクテリア内で起こっているかどうかはわからない。
8) 人とチンパンジーとテナガザルのmRNAと蛋白質を比較する実験を行った。するとmRNAより蛋白質が保存されていることの方が重要であるという結果が得られた。

PNAS 大羽
Vol.110 No.28
1) 低分子GタンパクRabはゴルジ体における小胞輸送に重要な因子である。この論文では、シスゴルジからトランスゴルジに移る際に、数種類存在するRabの存在比が変化し、その変化がGAPにより調節されていることを述べた論文。Rabの異常は神経疾患や免疫疾患など色々な病気に関わることから、Rabを調べる重要性があるのかなと感じた。
2) バクテリアが宿主に接着する際に使われる蛋白質(FimH)には活性化状態と不活性化状態が存在し、それによりB細胞により認識されるかどうかが変わってくるということが分かった。バクテリア蛋白質に対する抗体形成のしやすさが変化するようだ。

Vol.110 No.47
3) ヒストンの脱アセチル化を行うHDAC10がオートファジーを介してガン細胞の生存を助けるということが分かった。ここからHDAC10がガンになりやすさのリスクを示すマーカーとなったり、薬のターゲットになるかもしれない。 

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