12月も半ば、寒くなりました。今年最後の速報の感想をまとめました。今日の3名のみなさんの発表の中から、関心を持った内容についてまとめました。
西垣くん
Nature #7460, 7463から3報。
1) リボソームから生まれたてのタンパク質が出てきたところでフォールディングを助ける役目を持つ、trigger factorの機能する仕組みを調べている。光ピンセットでMaltose binding proteinとDNAを捕まえ、外から力を与えて引っ張ると、trigger factorのある時には中間状態に対応するforce-extension curveが得られた。一分子できっちり解析することで、foldingのどの状態でtrigger factorが関与するのかを明らかにしようとしているようだ。
2) 阪大の山口明人先生のAcrB結晶構造はnature4報目。今回は阻害剤の結合した状態での結晶構造を解いた。阻害剤が効かないホモログのMexYの構造をモデリングし、抗生物質が作用するポケットのフェニルアラニン(F178)がカギを握っていることを明らかにした。多剤耐性のメカニズム解明だけでなく創薬にも使えそうである。
西野くん
Science #6160, 6161から3報。
Page 824:酵母の翻訳開始複合体のクライオ電顕像を得た話。6.6Aで解いている。80Sリボソームを精製し、そこからin vitro initiation reactionを行うことで、複合体を再構成。5つのステップをかけてサンプルを作成している。得られた像に結晶構造を当てはめており、開始に伴う構造変化の詳細が見えてきたようだ。
Page 967:共生細菌ががん化に関与するという話。マウスの系を使って、抗菌剤の効果を調べると、共生細菌を死滅させてしまうと、ガン治療薬の効きが低下してしまうらしい。どんな共生細菌が関与するのかも調べているようだ。
朱さん
PNAS vol.110, #45, 49, 50から5報
E4723:細胞性粘菌の走化性にGEFのGxcTが関与することを発見した話。細胞骨格を制御する因子としてGTPに焦点を当て、GxcTを対象にしたようだ。欠失株では走化性が見られなくなるだけでなく、運動速度が低下し、細胞が丸くなる。
Page 20051:ミクログロブリンは可溶性から不溶性になるとアミロイド繊維を形成して病気の原因となる。ここで32番目にあるProがシスのconformationをとるか、transのconformationをとるかで溶解度が変化するらしい。このProに人工的なProに似た修飾アミノ酸を導入してアミロイド繊維形成を調べた話。Cis-transの異性化の速度が遅くなると、凝集しやすくなるようだ。