2014年1月20日

稲葉さん Nature Vol.504 No. 7480
p432
一酸化窒素シグナル伝達の機能不全は心筋梗塞のリスクを増大させる。遺伝的に窒素シグナル伝達に関わる因子(GUCY1A3)に変異があると、血栓が出来やすく、血管が詰まりやすくなることを実験的に示した。
p446, 451
共生細菌と制御性T細胞の分化の関係についての話。共生細菌の産生する酪酸が、腸内の炎症応答に関与するT細胞への分化を誘導する。腸の中はヒトの免疫系が腸内細菌を制御しているのか、腸内細菌によって住みやすいように制御されているのか、どちらが上流なのか。

堀田くん Science Vol. 342 No. 6164, 6165
No. 6164 p1389
恐怖学習により恐怖反応の目印になる感覚応答が促進されるという話。今までは恐怖と一緒に覚えた感覚を受容し、それが恐怖をもたらす感覚であると認識された後、その感覚に対するシグナルが増強すると考えられていたが、この論文ではその感覚刺激が入った時点でそのシグナルが増強されるということだった。
No. 6165 p1477, p1484
ワクチン設計を目指したHIV-1 envelopeの構造解析。p1477では4.7Åの解像度でX線結晶構造解析を、p1484ではクライオ電顕で5.4Åの解像度の像を見た。どちらもヘテロトライマーの構造だった。p1477ではインフルエンザの受容体結合部位の結晶構造の比較もしており、ワクチン実用化に向けて第一歩を踏み出したようだ。

平子さん PNAS Vol. 110, No. 29, 30
No.29 p11917
昆虫と腸内細菌の関係についての話。western corn rootwormはトウモロコシの害虫で、アメリカではこの害虫に対抗するため、トウモロコシと大豆を交互に植えるという対策をとっている。しかし最近大豆の中で生きられるものがあり、その特性は腸内細菌由来なのでは、という話だった。ヒトだけではなく、虫の腸でも細菌は重要な働きをするということが驚きだった。
No. 30 p12172
iPS細胞の効率はなぜ遅いのか、という話。iPS細胞のリプログラミングの効率の悪さについては、単に効率が悪いのではなく、リプログラミングした後すぐに分化した状態に戻ってしまうということを証明した。iPS細胞が再生医療でにぎわうのは良いことですが、もっと基礎的な研究も進むと良いですね。
No. 30 p12438
HIV-1 envelopeのクライオ電顕での観察。膨大な量のデータから、gp41がCD4とgp120の結合による構造変化で折り畳まれた状態から伸びることが分かった。また、中性抗体との結合の効果は、立体障害の大きさと関係があることも示した。

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