2014年2月10日

西野くん
Nature #7481, 7483から4報の紹介。そのうち印象に残った2報について。
1) バクテリオファオージφX174がホストの菌へDNAを注入する際に用いる輸送装置の一部の構造を結晶構造と電子顕微鏡で明らかにした話。ファージのHタンパク質は、菌の内膜と外膜を貫通するチューブ構造をとり、DNAはこのチューブを介して注入されるらしい。今回は膜貫通部位を削ったコンストラクトを結晶化した。美しいヘリックス10量体構造が印象的。

2) 電位依存性のNa+チャネル(バクテリア由来)の構造がすでに解かれているが、今回イオン選択フィルターの部分に変異を導入しCa2+チャネルに変化させたものの結晶構造を解いたという話。Na+選択フィルターとCa2+選択フィルターでは殆ど構造が変化しない。Ca2+が3箇所に結合した構造が明らかになった。途中の経過は分からなかったが、Ca2+が透過する際に2つのstateを経由するようで、3カ所のCa2+結合部位のうち真ん中だけに結合するstate 2, その両外側に結合するstate 1の2つを行き来するらしい。

竹川くん
PNAS Vol.110(#51), Vol.111(#2, 3)から6報。
Page 20473:細菌毒素は感染の際に膜を透過するが、その透過具合をin vitroで測定できるようにした、という話。表面プラズモンを利用した系で、ガラス表面にカルモジュリンを吸着させ、その上に膜を貼って、CyaAという毒素を外側に加えると、膜を透過したCyaAがカルモジュリンと相互作用して酵素活性が上がると同時に、プラズモンの測定値が変化するという系。少々複雑だがデータはきれいで、スクリーニングには使えそうな気がした。

Page 20741:線毛の根元のUsherとよばれるPore構造の開閉に重要そうな残基を探すという話。すでに解かれている構造をベースにして、エリスロマイシン感受性の違いで評価していた。

Page 20765:QsIAというquoram sensingの転写制御に関わる因子の構造と機能を解析した。QsIAは、転写因子LasRの二量体化を、LasRに結合することによって阻害するようだ。二量体形成位置にQsIAが結合し、LasRに二量体のQsIAが結合した結晶構造が明らかになった。

Page 966:電位依存性のligand-gated channelの構造の話。バクテリア由来のタンパク質のペンタマー構造は、これまでに報告されている。今回は中性pHでチャネルが閉じた構造を解き、チャネルの開閉の際に動くヘリックスの推定をしていた。

Page 1132:リファンピシンに耐性になるマイコバクテリアの話。これはなかなか面白い。コドンを読み間違えることで生き残りをはかるらしい。トランスファーRNAの変異体をうまく使って、そのメカニズムに迫っていた。

Page E492:マラリアと蚊の共生メカニズムの話。マラリアが蚊に感染すると、蚊の腸内にSM1という環状ペプチドを分泌するらしい。このペプチドはCysを介した分子内ジスルフィド結合によって環状構造を保ち、プルダウン実験からホスト(蚊)側のEBPというタンパク質と相互作用していることがどうやら重要らしい。

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