2014年5月12日

北山さん Nature
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1、 アポトーシスのメカニズムを知るためにATP放出チャネル(PANX1)の機能を調べていたら、重い副作用を起こすキノロン系抗生物質(Trovafloxacin)と関連があると分かったという話。最初は偶然の発見だが、最終的に副作用のないキノロン系抗生物質を作れるのではないかという所まで結果を基に議論されていて、面白いと感じた。

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2、 人工遺伝子回路に関する研究。2つの独立した周期性で発現制御を行う系(Negative-feedbackとQuorum-sensing)について調べてみると、ClpXPというプロテアーゼを用いる事でこの2つの周期を同調させることが出来た、という話。
3、 線虫を用いてミトコンドリアの機能不全を検知するメカニズムに迫った研究。このストレスの検知はE. coliやPseudomonasといったバクテリアによっても引き起こされ、逆に検知する機能を下げるバクテリアも存在するみたいだ。
4、 トランスポゾンが起こるのを防ぎ、宿主ゲノムを守る機構について調べた話。miRNAがeasiRNAの生産に重要であることを今回は示した。後で北山さんにExtended Data Figure 9を見ながら説明して頂きイメージをつかめたが、この論文の内容自体が複雑で難しかった。easiRNAの具体的な機能の解明が、これからの注目する点なのではないだろうか。

尾上さん Science
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1、 なぜゲノムに1コピーしかない転写因子は、進化の過程で致死性にならず機能を変化させることが可能なのか調べた話。元々の機能を維持しながら新しい機能を獲得するように変化していることが示されていた。
2、 抗体と結合する蛋白質としてProtein A, Protein G, Protein Lがこれまで知られていたが、今回ヒトに存在するマイコプラズマから新しい抗体結合タンパクが見つかりProtein Mと名付けられた。Protein MはFabを認識し、IgG以外の抗体でも結合する事が出来るのが他と違った特徴である。実用化に繋がりそうだと思った。
3、 HIVウィルスが細胞外に放出される時、ESCRT 複合体(endosomal sorting complex required for transport)が利用されることが知られている。今回は球状のHIVウィルスがESCRT複合体を内部に取り込むことが分かった。斬新なモデルだと感じた。取り込んでどのように機能するのか詳しいメカニズムに興味を持った。

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4、 ESCRT複合体が細胞膜の修復も行っているのではないかと述べた論文。穴の空いた部分に局在し、ノックダウンにより修復されにくくなるようだ。ESCRT複合体は上記以外にも、不要な膜タンパクの破壊や酵母の細胞分裂に関わることから、これから他にも新しい機能が見つかるかもしれない注目の蛋白質複合体だと思った。
5、 アリにおいて2つの種の間での生存競争の話。ある南米のアリはギ酸をおしりから分泌することで解毒を行っているようだ。おしりにシールを貼るだけで生存率の優位差がはっきり出ていたのが印象的であった。
6、 絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が、現代の人々の中にも存在するという論文。世界に住む人々の皮膚の色の違いがネアンデルタール人からの引き継ぎ方の違いが関わると述べていた。

山口さん PNAS
Vol. 111 no. 11
1、 巨大なDNAを持つウィルスの新しい種が見つかったという話。Plthovirusという転写装置を自ら持ち、DNA配列はGC richであるタイプは今までにない新しいタイプのようだ。
2、 植物病原性のカビ(C. actatum)が感染した時に、菌体内に発現する蛋白質をRNA干渉で阻害できたという話。ウィルスゲノムに阻害したい遺伝子配列を導入し、植物に感染させても効果が出るみたいだ。

vol. 111 no. 12
3、 Super-resolution microscopyによりFtsZリングの重合パターンがPatchy band modelに近いことを示した話。断片的に重合しているのがはっきり示されていると感じた。

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