2014年6月30日

郷原さん Nature Volume 509 Number 7501, Volume 510 Number 7503
1)血管と脳細胞との間の物質輸送を制限する仕組みである「血液脳関門」に重要な遺伝子を同定した話。この遺伝子が欠損すると制限が緩和されるため、薬を脳細胞に届けやすくするのに応用できるかも知れないということだった。
2)大腸菌由来の多剤排出ポンプAcrAB-TolCの結晶構造解析の話。内膜側に隣接するAcrZが結合した状態で解析した点が新しいらしい。AcrZはポンプの薬剤認識に関わる因子で、欠損すると特異性がなくなることはわかっていた。
3)メタン酸化細菌Methylocella silvestrisはプロパンを酸化することもできるという話。これまでは、メタン酸化細菌ならメタン、プロパン酸化細菌ならプロパンしか酸化できないというのが通説だったが、この菌はどちらも分解することができる。プロパンが存在するとメタン酸化が促進されることから、メタンのみが存在するときより増殖に有利らしい。
4)膜タンパク質の脂質選択性の話。脂質との結合具合によって膜タンパク質は状態を変えるという話は以前からあったそうだが、実際AqpZ(アクアポリン)とAmtB(アンモニアチャネル)がそれぞれ特異的な脂質によって安定化されることを示していた。イオン移動度質量分析という方法はよくわからなかった。

Kumarさん Science Volume 344 #6188
1)生命の起源のエネルギーについての話。これまでは特定の地球環境を祖先として化学合成やRNAに注目して論じられてきたが、熱水噴出孔が地球化学的なエネルギー放出反応と古代の嫌気性菌の生理学の興味深い類似性を示しており、ここから新たな発見が生まれるかもしれないということだった。
2)バクテリア由来のカルシウムチャネルの構造からヒト由来のカルシウムチャネルの構造を予測した話。pHによって孔が開いたり閉じたりする様子をそれぞれの構造から確認し、中性でカルシウムイオンの輸送が行われるということだった。ここで話題にしているヒト由来のチャネルは抗アポトーシスでがん細胞にみられるらしく、その性質について調べることで新規薬剤の開発に応用したいらしい。
3)海洋性真骨魚類がpHの変化を察知して獲物をとらえるという話。獲物が呼吸によって発するCO2による海水のわずかなpH値変化(8.23から8.17)を感知できることに驚いた。そこまで正確にpHが測定できるのか少し疑問だが、Movieのナマズはかわいかった。
4)睡眠が学習の後の樹状突起スパインの形成を促進するという話。睡眠によって知識が定着するという話は有名だが、実際に細胞レベルで実験していて面白かった。睡眠前に学習したことを睡眠後に反復するとさらに効果があるらしい。

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