2014年7月7日

尾上さん Nature Vol.509 #7502, 7504
#7502-p575, 582: Articleに2報同時に発表された、ヒトのプロテオーム解析の話。ついにヒトを対象として、全タンパク質の網羅的解析が行われる時代に突入した。分かったこととして、これまで遺伝子をコードしていないと思われていた領域から発現するタンパク質がかなりあるということや、開始コドンが間違っている(第1メチオニンでなく、第2メチオニン以降から合成が開始されている)こと、組織によらずmRNA量とタンパクの発現量がリニアに相関していることなどが挙げられていた。また、どこまで正確なのか分からないが、タンパク質のストイキオメトリも測れるようになってきている。

#7502-p612: 18種のことなる土壌から得られた細菌のゲノムを調べて、人に感染する病原性細菌の抗生物質耐性遺伝子は意外にもこれら土壌細菌から水平伝搬していなかったという話。

#7504-p221: PNASの論文のNews and Views解説記事。トマトを用いた実験で、虫に食べられてしまった植物体がどう防御反応を起こすかを明らかにした話。虫が植物を食べると、揮発性の物質((Z)-3-Hexenol)が植物体から分泌され、それが隣のまだ虫がかかっていない植物体に到達し、HexVicという虫に毒となる物質に変換されるらしい。

平田さん PNAS Vol. 111 #23, 24
#23-p8428: 細菌マグネトコッカスのもつNaチャネル(NavMs)は、ヒトのNaチャネルと薬理学的性質が非常に似ている。そこで、 NavMSと不可逆的阻害剤PI1の共結晶の構造を解いた。四量体の真ん中にチャネルポアがあり、ポアの位置にPI1が結合していた。

#23-p8392: アリが効率よくえさを巣に持って行く行動の解析。観察結果をベースに組み立てた行動の数理モデルを使って考察している。アリは巣からえさまでたどり着く間にフェロモンを分泌し、通った経路に残して行く。そのフェロモン量の多いところを選ぶことで、最短距離を見つけ出しているらしい。

#24-p8809: 細菌の染色体分配に関わるParBの話。ParBは、複製起点の近傍に位置するparS配列を認識し、ParBダイマーとして結合することがわかっている。詳しく見て行くと、複製起点近傍にParBがかなりの分子数局在して結合しており、局在機構は良くわかっていない。この論文では、ParBがどのようにしてparS配列近傍にlarge protein-DNA complexを形成しているのか、数理モデルを立ててシミュレーションにより明らかにしようとした。分かったことは、ParB dimer「間」の結合部位を複数個考えたモデルにすれば、localized large protein-DNA complexになるようだ。当たり前のようにも思えるが、ParBはFlhGとも似ているので、FlhGも異なるsurface間で相互作用して極局在しているのかもしれないなと考えた。

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