2014年11月17日

朱さん Nature #7524, 7525
1) リポソームや培養細胞へカーボンナノチューブによるチャネルを人工的につくり、それがチャネルとして機能するのかを物質の流入による電流を計測することで調べた。病気の細胞へ直接薬を輸送するという医療技術モデルが印象深かった。
2) ヒトが病気になると食欲がなくなり生産されるエネルギーは減るはずだが、腸内細菌量は増加する。細菌のLPSを認識した免疫反応によりフコースつくられ、腸上皮細胞の糖鎖に付加されると、それらの糖を栄養源として腸内細菌が増殖するという免疫モデルが、マウス腸上皮細胞においてフコース依存的な蛍光を調べることで提唱された。
3) アカパンカビの時計関連遺伝子frqとそのアンチセンスRNAであるqrfは、光依存的に発現し、一方の発現量が多いと他方は少なくなるというネガティブフィードバックループにより互いの発現を調節することで時計のリズムをつくることが示された。
4) 一般に大型放射光施設などで用いられる加速器はレーザーを利用しているため長い距離が必要になるが、プラズマを利用することで30 cmの加速器を作り出した。自分たちで装置をつくることが大切だという筆者の考えに納得した。
5) 植物細胞は、頂端分裂組織からの層構造的な相対的位置情報に基づく成長因子の濃度勾配により分化先が決定される。ゼブラフィッシュの胚発生においても、植物の分裂組織と同じようにFGF (fibroblast growth factor)の濃度と細胞の形状(=植物の位置情報)が作用し合い、組織形成のタイミングや組織の大きさが決定されることを示した。

本間先生 Nature #7521, 7522, 7523
1) 人工甘味料は体に良いのか悪いのかを、マウスに人工甘味料入りの水を飲ませて血中グルコース濃度を測定し耐糖性を評価して検証した。砂糖とは異なり、人工甘味料を接種し続けると血中インスリン濃度が上がらなくなり、腸内細菌層が嫌気性に変化し、代謝経路も変わることが示された。
2) ラットのイオンチャネル型グルタミン酸受容体レセプターであるAMPA receptorとカイニン酸 receptorの構造を、アゴニストやアンンタゴニストを加えた条件で、クライオ電顕でsingle particle analysisして解いた。解像度は7.6 Åだが、ゲート開閉におけるドメインのダイナミックな動きが示された。
3) 細菌や動物ではCa2+チャネルが浸透圧センサーとして働くことが知られているが、植物では知られていない。Ca2+依存的に蛍光の出るタンパクを発現するシロイヌナズナの種子に変異を入れ、スクリーニングでチャネルの候補OSCA1を得た。動物細胞に発現させてCa2+の流入を調べており、本当にオスモセンサーかどうか怪しいが、植物で保存されている植物特有のチャネルだそうだ。
4) シベリアで見つかった原生人類の骨からゲノムが決定された。今回はネアンデルタール人とユーラシア人の混血だったらしい。ネアンデルタール人が人類の祖先でない説があるそうで、私達の常識はこうやって崩れていくのかと感じた。
5) 病原菌(今回は結核菌)がどのように生まれたかを次世代シーケンサーにより調べた。ペルー人の人骨(脊椎カリエス?)から菌を同定した結果、シーライオンなどに寄生する菌に近く、そこからヒト型へ変化したと考えられている。
6) 赤痢菌で亜鉛トランスポーターPタイプATPaseの構造が解かれた。3.2 Åと2.7 Åで解かれ、銅やカルシウムのトランスポーターATPaseと構造が似ていることが分かった。

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