2014年12月8日

平子先生 Nature Vol. 511 #7507, #7509
1) 哺乳類の手足の指の形成についての論文。マウスは5本、ウマは1本、ラクダは2本といったように指の本数には多様性がみられるが、基本的には5本でそこから指が減ったり減らなかったりという発生の過程を経ることでこうした多様性が生まれるらしい。

2) 細胞外膜にLPS(リポ多糖)を輸送するシステムの中の、外膜側に位置するLptD, LptEのタンパク質構造解析についての論文。LptDはイバレルとゼリーロール構造から成り、イバレル部分が外膜に挿入されていてその中空部にLptEが差し込まれている。LPSが外膜表面に提示される際、LPSの糖鎖部分がLptEと作用することで比較的LPSの脂質部分がフリーになり膜に移るのではないかと予想していた。新規抗生物質のターゲットとしてもLPS輸送システムは注目されているらしい。ゼリーロールは教科書でしか見たことがなかったので実際の構造で見られてうれしかった。

3) 結核に関して、結核菌ではなく宿主細胞側の性質に注目した論文。結核菌に感染していても発症する確率は5〜10%であり、発症するか否かは宿主側にも要因があるのではないかという観点で述べている。インターロイキン1やプロスタグランジンが多いと結核菌に強い宿主となるようである。

4) がん細胞のまわりの糖鎖の長さを長くすると、インテグリンの集合を介して細胞表面が所々くぼみ細胞接着力が弱まるとともに、細胞が生き残り増殖するためのシグナルをより効果的に発することができるという話。接着力が弱まることは細胞の転移に有利らしい。

北山先生 Science Vol.345 #6199, Vol.346 #6205
1)2) 酵母によるバイオエタノール合成の話。1)は高温条件下でも効率的にエタノールを生産できるパン酵母をスクリーニングし、その変異原を同定した論文。変異原は真菌の膜成分のひとつであるエルゴステロールの合成に関わる因子で、この因子の変異により高温でも最適な膜流動性を維持できるようになったらしい。2)は合成したエタノールによる反応阻害を緩和する方法を探った論文。培地中のカリウムイオン濃度を高くしたり、カリウムイオンインポーターの発現を増やしたりしてカリウムイオンの漏れを抑えることでアルコール耐性が上がるということだった。

3)4) リボスイッチの話。リステリアやエンテロコッカスは腸内で生きるためにエタノールアミンを代謝するための遺伝子を持つが、この遺伝子の転写はリボスイッチによって制御されており、補酵素がリボスイッチに作用することでRNAの構造が変化し、転写因子が結合できるようになるらしい。

堀田さん Science Vol. 346 #6209, #6210
1) 柿の木の性決定因子を同定した論文。非モデル植物でありゲノムの情報がまったくない状態であったが、次世代シーケンサーなどを駆使して明らかにした。ほとんどの植物は雌雄同体だが、今回扱ったマメガキはメスはMeGI、オスはOGIという特有の遺伝子を持つそうで、MeGIは濃度依存的にメスの性質を誘導、OGIはMeGIを抑えることでオスの性質を誘導しているらしい。

2) ヒトのミトコンドリアにあるリボソームの構造解析。電子顕微鏡によるsingle particleの解析によるもので、翻訳後に合成されたタンパク質が通るトンネル部分が疎水性であることから、ミトコンドリア内で作られるタンパク質はすべて疎水性だということだった。

3) 核の内膜においてミスフォールディングしたタンパク質を分解する因子を明らかにした論文。転写が抑制されている変異体からこの因子を見つけたという話が理解できなかったが、細胞質ではなく核内で特異的にはたらくということをシグナル配列などを使って証明できることに驚いた。

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