2015年2月9日

平田さん Nature #7533, 7534
1) 多糖を分解する腸内細菌の糖鎖分解メカニズムを、酵素の所在や結晶構造、分解された糖などを調べることで示した。この細菌は酵母細胞壁の糖鎖を細胞外で最小単位まで細かく分解するのではなく、他の菌では取り込めない長さまで分解し、長い糖鎖をペリプラズムへ取り込むことで糖鎖の独占をしていた。酵母を頻繁に摂取する人間の性質を上手く利用した、賢い菌だと思った。
2) 高度好熱菌のABCトランスポーターの構造をクライオ電顕を使用した単粒子解析法により解いた。ヘテロダイマーであるこの因子の構造を抗体のFab領域によって安定化させたサンプルを用いていた。今回解いたアポフォームの構造と、他の菌で解けていた異なるフォームのABCトランスポーターの構造とを比較して、細胞内から細胞外へと基質が輸送されるサイクルの構造変化モデルを提唱していた。
3) 1つの神経はいくつの味に反応するのかを、マウスの膝神経を観察することで調べた話。Ca2+に反応するレポーター因子を内視鏡を用いて観察するという、細胞体一つ一つの神経の活動を直接可視化した新しいシステムにより、味覚の細胞体の大半は1種類の味にのみ反応することが分かった。

Kumarさん Science #6194
1) お肉を食べるよりも、野菜や穀物を食べた方が効率よくエネルギーを摂取できるという話。様々な国の農業状況や、食べ物のエネルギーデータを集めて議論していた。お肉を食べることで効率よくエネルギーを得られると思っていたので驚きだった。
2) ヒトのtRNA合成酵素は、ヌクレオチド結合ドメインが高度に保存されている。この酵素の触媒機能欠損変異体の話だったが、パターンが多く、よく分からなかった。
3) 細胞分裂時の染色体分裂では微小管がスピンドルを形成する。スピンドルの伸長はAurora BとPP1/PP2Aとの濃度勾配によって決定されることが分かった。この濃度勾配が細胞分裂の進行に従って変化していくことで、スピンドルの長さが正確に制御されることが示された。多くのことが分かったように思える細胞分裂にも、まだ多くの謎があることを実感した話だった。
4) 微小管上を運動する分子モーターであるダイニンは、ダイニン・カーゴ・ダイナクチンが全て揃うと運動能を示すことをヒトのダイニンを用いたin vitroの実験により実証した。

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